【松本浩彦医師】「Quarantine(検疫)」の語源は1347年のペスト流行までさかのぼる イタリア語の「40日間」
新型コロナウイルスの流行で、多くの豪華外洋クルーズ船が「検疫」のため、港外で長期間に渡って停泊させられる、という事態が世界中で起こり、物議を醸しました。テレビでその様子を見ていて思い出したのが、検疫という言葉の語源です。
検疫は英語で「Quarantine」といい、これはイタリアのヴェネツィア地方の方言である「Quaranten」を語源としています。元のイタリア語の意味は「40日間」です。1347年に世界中でペストが流行した際、この感染症はオリエント(東洋の国々)から来た船が広めているとして、当時のヴェネツィア共和国政府は、船内に感染者がいないことを確認するため、ペストの潜伏期間である40日間、疑わしい船をヴェネツィア近くの港外に、強制的に停泊させる法律を作りました。まさに今、それと同じことがこの世で起こっているのです。
現在では「検疫」の定義は、特定の国や施設に出入りする人、輸出入される動物・植物および食品・飼料、生物を原材料とする物品、生物が含まれる可能性のある土壌・岩石などを一定期間、隔離した状況に置いて、伝染病の病原体などに汚染されているか否か確認・検査すること、とされていますが、その語源は700年ちかく昔にさかのぼることになります。
じつは日本でも第二次世界大戦直後、アジア各地から日本軍の復員兵や引き揚げ者の帰国が始まった直後、彼らによって持ち込まれたコレラで、多数の死者が出ました。そのため復員兵を乗せた船は、検疫のために40日間、沖に留め置かれました。この船を「コレラ船」と呼び、これは当時の俳句や川柳で夏の季語になっていたそうです。皮肉というか、殺伐とした話です。
◆松本 浩彦 芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。
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