鎌田大地 飛躍の原点-恩師・森下監督語るJ1鳥栖時代「何をすべきか見えている」

 松本戦でデビューし、Jリーグ初ゴールを決める鳥栖・鎌田=15年5月10日
 選手に指示を出す鳥栖・森下監督=15年
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 サッカーW杯カタール大会(20日開幕)日本代表で、W杯代表に初めて選出された鎌田大地(26)=アイントラハト・フランクフルト=は、ドイツ1部リーグの中心選手として欧州チャンピオンズリーグでも存在感を存分に発揮している。挫折も乗り越えてたどり着いた現在地。2015年にJ1鳥栖で高卒新人の鎌田をデビューさせた当時の指揮官、森下仁志監督(50)=現G大阪ユース監督=が原点となるルーキーイヤーについて語った。

  ◇  ◇

 2017年6月25日、Eフランクフルトへの移籍が決まった壮行セレモニーのあいさつで、鎌田はこう語った。

 「1年目に見てもらった森下監督にはすごいお世話になりました。あの人じゃなかったら今の僕は確実になくて。すごいクソガキだった僕を面倒見てくれて本当に感謝しています」。

 鳥栖では15年の開幕を前に指揮官が交代。当時42歳の森下監督が就任した。そこに高卒新人として加入したのが鎌田だった。森下氏が当時を振り返る。

 「1月の沖縄キャンプで見て、すごく良いものを持っているなと。いくつかJクラブに練習参加をして、どこにも引っかからなかったという話をスカウトから聞いていたので、これはラッキーだなと思いました」

 その前年、京都・東山高からプロを目指した鎌田は、ジュニアユース時代に在籍したG大阪を始め、複数クラブの練習に参加したが、内定を得られずにいた。その中で再度チャンスをもらえた鳥栖への入団が決まる。11月17日、秋も深まっての入団発表だった。

 「やる気があるのかどうなのか分からなくて、他のクラブは取らなかったと聞いたので(笑)。見方によってはそう見られるなとも思いながら。僕も大阪でも育ったので、あの雰囲気に違和感はない(笑)。うち(G大阪)のジュニアユース出身と聞いて、なるほどなと。やっぱり関西の血というか、本質的には似ている部分がある」

 初対面では、ふてぶてしいと誤解されるほど無愛想。だが実際の鎌田は話し好きで、鳥栖時代は先輩にすごくかわいがられていたという。底知れぬセンスと努力できる才能を感じ取った森下監督は、鎌田を軸とするチーム作りに着手する。そして5月10日の第11節ホーム松本戦で満を持して送り出した。後半27分から途中出場すると、同45分には同点弾をたたき込み、鮮烈なJデビューを飾った。

 「最後は大地がゴールを決めたけど、交代で出場してファーストプレーのところでFWの豊田(陽平)に30メートルぐらいだったですかね。すごいスルーパスを通した。それを見た時に才能というか、ものすごいものを持っているなと」

 良い選手が必ず持っている四つの要素があると森下監督は言う。それは鎌田にも当てはまる。

 「僕はいつも四つ。すごく大事な部分です。技術、判断、走力、心の部分。彼はどんなスタイルでも適応できる。なぜかというと、チームを勝たせるために、相手に対してどうしていくのか。自分は何をすべきか。チームメートをどう生かすべきか。そういうことがものすごく見えている。うちにいたヤット(遠藤保仁)に似ている部分はありますね。ヤットも勝負強かった。何をすべきかということは人生においても同じ。彼の考え方がサッカーに反映している」

 決してエリート街道を歩んできたわけではない。ユース昇格はかなわず、プロ入りも簡単には決まらなかった。欧州挑戦も1年目は試合に絡めず、レンタル移籍も経験。むしろ挫折の方が多い。それでも目指す目的地を見失うことなく、着実に前進してきた。

 「彼はあまり外には言わないとは思いますけれど、やっぱり小さい頃から自分が目指すところがあって、たくさん難しい状況、挫折も重ねながら、その時々に踏ん張ってきた。だからすごく感性の高い選手です」

 コロナ禍前の19年末、現地で鎌田の試合を観戦して激励した。

 「僕から見て、プレーはJリーグのままでした。それがすごいなと。みんな、スタイルを変えるじゃないですか。生き残るために。でも彼のプレーの感じが良い意味で全然変わっていない。自分のスタイルを進化させて、悠々とやっている姿は一緒でした」

 いよいよ初のW杯が始まる。恩師は最後にこうエールを送った。

 「彼の本気度というかね。W杯期間中でも相手が強くなればなるほど、成長できる選手。健康でピッチに立ってもらいたいですね」

 ◆鎌田大地(かまだ・だいち)1996年8月5日、愛媛県伊予市出身。G大阪ジュニアユースから東山高を経て2015年に鳥栖入り。17年夏にEフランクフルトに完全移籍した。シントトロイデンへの期限付き移籍を経験して19年に復帰。21-22年度、欧州リーグ優勝。19年3月22日の国際親善試合・コロンビア戦(日産ス)で日本代表デビュー。国際Aマッチ通算21試合6得点。180センチ、72キロ。

 ◆森下仁志(もりした・ひとし)1972年9月21日、和歌山県海南市出身。順大卒業後、1995年にG大阪に入団し、2001年まで在籍した。札幌を経て、05年に磐田で現役引退。06年から磐田ユースコーチとして指導者をスタートした。12年に磐田監督、14年に京都監督代行、15年に鳥栖監督、17年に群馬監督などを歴任した。19年にG大阪U-23監督、21年からG大阪ユース監督を務める。

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