“テスト”に振り切った采配 空中戦の脆弱さ露呈 カナダ戦で見えた森保Jの収穫と課題
「国際親善試合、日本代表1-2カナダ代表」(17日、ドバイ)
サッカーW杯カタール大会を控える日本代表は17日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでカナダ代表と国際親善試合を行い、1-2で逆転負けを喫した。本番前最後の実戦で、森保一監督(54)は成熟度を高めるよりも“テスト”に振り切った采配を振るった。本大会で「ベスト8以上」を目指す日本が直面した収穫と課題を検証する。
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日が落ちても蒸し暑さの残るピッチ横で、森保監督は幾度もペンを走らせた。目の前で起こる事象を漏らさぬように。W杯初戦を6日後に控えた最後の実戦。照明に照らせた鮮やかな芝に成果と課題が混じり合った。
主力を並べて完成度を追い求める選択肢もあったが、主軸の遠藤、守田、冨安らが起用できないことで、“テスト”に振り切った。「状態を確かめなければいけない選手が何人かいた」という言葉通り、膝の負傷から復帰したばかりの浅野、板倉、田中を先発起用。さらに試合間隔が10日以上空いた南野や国内組の一部を送り出した。特に状態が不安視されていた板倉は67分間、浅野は45分間プレーし、ドイツ戦での起用の見通しが立った。
ボランチでフル出場した柴崎は先制点をアシスト。終了間際には山根の決定機も演出した。序列では遠藤、守田の後塵(こうじん)を拝するが“一刺し”で仕留めるパスには熟練の妙味が凝縮されていた。得点を求める展開でオプションとなり得ることを証明した。
「W杯を見据えた戦術的な確認」では、後半22分から投入した鎌田をボランチで起用。遠藤、守田の主戦2人の状況が不透明とあって、トップ下を託してきた背番号15を中盤の底に配置した。所属クラブ同様に巧みなパスを駆使し、守備でも強度を発揮。指揮官は「選択肢ができた」と手応えをにじませた。
最終盤には3バックを試した。左サイドバックで先発した伊藤は左センターバックも経験。谷口と相馬もフル出場で2つの布陣を体感した。「私が監督になってからの経験値がそこまで高くない」(森保監督)という選手に戦術浸透と世界基準の戦いを植え付けた。
一方でセットプレーの守備という問題点も露呈した。CKは試合開始から何度も相手に合わされ、前半21分にはついにゴールを割られた。空中戦の脆弱(ぜいじゃく)さはドイツ戦でも致命傷になりかねない。「FK、CKの対応は必ず出てくる」と森保監督も危機感を隠さなかった。さらに「試合の終わらせ方」では終了直前に山根がPKを献上し、相手の勝ち越しを許した。吉田は「あの時間帯は我慢しないといけない」と悔いた。
「今日の先発で出た選手が、そのままドイツ戦(の先発)ということにはならない」(森保監督)と言うように、最終確認を優先させた。「チームとして有意義だった」と総括した一戦を、ドイツ戦で実り多きものとする。(デイリースポーツ・山本直弘)