森保Jが死の組1位突破!相手攻勢に“切り札”冨安 神采配で史上初2大会連続16強
「カタールW杯・1次リーグE組、日本代表2-1スペイン代表」(1日、ドーハ)
日本代表は1次リーグE組の最終戦でスペインに2-1で逆転勝利した。1点を追う後半3分に堂安律(24)=フライブルク=のゴールで追い付くと、3分後に田中碧(24)=デュッセルドルフ=が勝ち越し点を決めた。森保一監督(54)は29年前に自身が経験した「ドーハの悲劇」を振り払う金星を挙げた。日本は2002年日韓大会以来、首位で2大会連続4度目の決勝トーナメントに進出した。5日午後6時(日本時間6日午前0時)から史上初の8強を懸け、前回準優勝のクロアチアと対戦する。
「悲劇」は繰り返されなかった。7分間のロスタイムが時を刻み、残り1分ほどにさしかかろうとしていた。戦況を見守る森保監督の脳裏に29年前の苦い記憶がよみがえった。
「ドーハの悲劇」。1993年10月28日、翌年に控えたW杯米国大会アジア最終予選イラク戦で終了間際に追い付かれ、初のW杯出場権を逃した。背番号17を背負って出場した森保監督も悲嘆に暮れた。くしくもスコアは2-1。日本が同点にされると敗退が決まる状況も同じだった。
時代は変わっていた。森保監督の眼前には、劣勢にもかかわらず前を向き、臆することなく守備に挑む選手がいた。守勢に回り冷静さを失った「あの日」とは違った。「選手たちが新しい時代のプレーをしてくれた」。1点差を守り抜き、史上初の2大会連続16強を勝ち取った。歓喜に沸くピッチ横で、珍しく両拳を突き上げた。
「奇跡」も2度起こせば「必然」と言える。W杯優勝経験国から2度目の逆転勝利は豪胆な指揮官の采配が生んだ。今大会初めて、試合開始から布陣を変えた。基盤とする4-5-1ではなく5-4-1で5バックを敷いた。前半早々に失点したが、「プラン通りに進んでいる」と1点差で前半を折り返した。
後半はチームが“劇変”。「より攻撃に転じていく」と堂安、三笘を投入。ドイツ戦に続き自ら試合を動かした。衝撃の3分間を迎える。後半3分に堂安が鮮烈な左足で試合を振り出しに戻す。余韻も冷めやらぬ同6分、田中が押し込み勝ち越した。三笘の折り返しはゴールラインを割ったかに見えたが、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の判定も味方につけた。
後半23分には冨安を5バックの右へ送り出した。相手が左サイド2人を交代し、攻勢を強めようとした策を見透かしたように守備の“切り札”を投入。采配は神懸かっていた。スペインに74%のボール保持を許し、日本の6倍近くとなる992本のパスを通された。不本意だったかもしれないが、ボールを捨て、勝利を拾った。
4日後にはW杯で3度目となるクロアチアとの対戦が待つ。あと一つ勝てば、日本史上初のベスト8が決まる。まだ見ぬ「新しい景色」はもう、目の前だ。