森保JAPAN 8強の夢4年後へ 死闘120分、今大会初先制もPK戦で力尽く
「カタールW杯・1回戦、日本代表1(PK1-3)1クロアチア代表」(5日、アルワクラ)
サッカー日本代表の「新しい景色」、史上初8強の夢はまた散った。前半、前田大然(25)=セルティック=のゴールで先制も後半同点とされ、延長でも決着付かず。最後は前回準VのクロアチアにPK戦の末、力尽きた。1次リーグでドイツ、スペインを撃破し世界を驚かせ“死の組”を1位通過。森保一監督(54)は「世界に勝っていける『新時代』を見せてくれた」と強調した。カタールで流した悔し涙が4年後、米国、カナダ、メキシコ3カ国共催の2026年のW杯で悲願8強の糧となる。
目の前にあった「新しい景色」を見ることはかなわなかった。120分間の死闘の末、もつれ込んだPK戦で日本は3人が失敗。4度目の挑戦でも、史上初の8強入りは果たせなかった。夢破れたピッチの中央で組まれた円陣。森保監督は「(選手たちの)努力が色褪(あ)せることはない、無駄なことはなかった」と語りかけた。
今大会4試合目で初めて先制に成功した。前半43分、ショートCKから堂安がゴール前に入れたクロスを吉田が折り返し、最後は前田が左足で押し込んだ。不得手とされていたセットプレーから待望の得点が生まれた。
後半10分に同点とされたが、その後は耐え抜いた。2-0から25分間で逆転された4年前の「ロストフの悲劇」のように、大きく崩れることはなかった。延長に入り、途中出場の三笘が自陣からドリブルで持ち上がり好機を迎えたが、シュートはGKの正面に飛んだ。「勝っていてもおかしくなかった試合内容」(森保監督)だったが、最後の詰めを欠いた。
ベスト8という「新しい景色」は見られなかったが「ドイツやスペインに勝つ、W杯優勝の経験があるチームに勝てるという『新しい景色』は見せてくれた。世界で戦い、世界に勝っていける『新時代』を見せてくれた」と選手をねぎらった。
日本人の持つ献身性や勤勉さを根幹とするチームを作り上げた。欧州組は26人中19人に達し、選手個人の力量も増した。「歴代最強」(長友)のチームで挑んだが、悲願にはわずかに届かなかった。
「一戦一戦生きるか死ぬかが懸かっている」との覚悟で臨んでいた。最終予選初戦で敗れた際には「進退伺」も出した。常に日本サッカーの行く末を案じ続けた。「(任期が)途中で途絶えたとしても、次につながる何かを残しながら仕事をしたい」と代表監督の職責と向き合ってきた。
試合後は観客席に向かい、体を90度に折り曲げて深々とお辞儀した。会見の最後には「必ず『最高の景色』を見られる日が、日本のサッカーに来ると思う」と締めくくった。日本の可能性を信じ抜く言葉だった。