まだ野球が根付いていない…WBC敗退の韓国と台湾

 WBCの1次ラウンドA組で、韓国と台湾が揃って敗退した。アジア野球のコラムとしては、正直、残念だしガッカリもした。それは初の自国開催となった韓国はもちろんだろうし、その韓国に結局はまた敗れ、次回大会は前年開催となる予選からの参加を余儀なくされた台湾は尚更かも知れない(ちなみに台湾は09年大会に続いて2度目の予選)。

 両チームとも敗因の背景には、様々な要素はある。メジャーを含むアメリカでプレーする選手の相次ぐ不参加。国内選手の不振や故障による辞退。若い選手の台頭不足。台湾に至っては以前にも記したことだが、プロとアマ組織の対立から、国内組ですらベストメンバーを組むことはかなわなかった。中国も日本に敗れ、0勝3敗で東京ラウンドの最下位が決定した。

 アジアの野球は廃れてしまったのだろうか?日本が2次ラウンド進出を決めている今、そんな疑問自体、おかしなことだとは理解している。その一方でC組、D組で始まったメジャーリーガーらのパワフルな対決を眺めるにつけ、わずかな羨望とともに、やはりWBCはメジャーリーガーの大会なのかと思ってしまったりする。

 アジアの野球と一括りに出来ない理由は、勿論、野球というものがアメリカから流入され、広がっていく過程が、それぞれの国や地域でずいぶんと異なる点にある。

 韓国はベースボールを選んだ。プロ発足当時の80年代には日本のプロ経験者も多く関わり、日本的な野球が関心を集めた時期もあった。しかし同時に彼らは日本的な野球の向こうに“日本”を見て抵抗感を抱いた。またアメリカへの憧れや、そもそも野球の本場というもっともな理由から、徐々に韓国でのそれはベースボール化していった。ただそれは、残念ながら目に見える、表面的なものに過ぎなかった。結果、少なくとも現在は、日本野球でもなくベースボールでもない、また「韓国野球」と呼べるスタイルでもないものとなっている。あえて言うなら、韓国の地で野球は、いまだ根付いていない。

 台湾も、自分たちのスタイルを持ちきれていないという点では、韓国と似ているかも知れない。中国大陸から離れ、微妙な地政学的立場の台湾では、なかなか「自分たち」を見つめようとする気運は薄かった。種をまき、育てるというより、育ったものをよそから運び込むことをよしとした。例えばプロ野球でも日本の監督が6球団中5球団、という時期があった。発足当時のことだから致し方ないともいえたが、日本人監督が任期切れで帰ろうとすると、後任をまた日本から探す、という繰り返しも多かった。そのためせっかくの台湾人の指導者を育成する機会を逸したことも多かった。アメリカ人監督やコーチを招く流れもある。アメリカ系の人達は、選手に厳しくあたらない。それは彼の地の選手にしてみれば心地いいだろう。伸び伸びとプレーさせて貰える。では台湾野球は、ベースボールになっていくのか?

 そう問いかけると、そうでもなさそうだ。アメリカ的な野球の中でも、どこかに日本野球への嗜好もある。そうした要素がうまくミックスしていくなら、それもいい。だが良いと思うものを取り入れ、合わないと思うものを捨てる。そんな選択はない。少なくとも感じられずにここまで来ている。まるで水面にたゆたう、浮き草のように。

 たかだか1、2試合負けたところで、なにをご託並べているのか。そう思う反面、たかだか1、2試合の中だからこそ、見え隠れするものもある、とも感じる。

 さて。唯一勝ち残っている日本の野球が、どこまで、あるいはどのように、本場の連中と互していくのか。見つめていきたい。(スポーツライター・木村公一)

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