普段は抹茶味のお菓子、飲み物をこよなく愛し、映画「ダイ・ハード」シリーズに心を躍らせる。顧問の奥村隆太郎さんは「練習も変わったことはしていないし、本当に普通の高校生」と話すが、その走りには天賦の才が備わっている。
　“鉄人”の教えも存分に生かした。今年１月の表彰式で、元プロ野球、阪神の金本知憲氏（本紙評論家）に「大会前に緊張するんです」と悩みを打ち明けた。「震えるもんだと思っておけばいいよ」‐。アニキの金言を胸に、重圧のかかる決勝でも、追い風参考ながら１０秒０３で走り、ロンドン五輪代表の山県らを抑えきった。「ボルト選手と一緒に走って、自分と何が違うのか見てみたい」。あどけない表情で話す１７歳の瞳は、無限の可能性を感じさせた。

　男子１００メートル（タイムレース）は日本歴代２位の１０秒０１の記録を持つ１９歳の桐生祥秀（１９）＝東洋大＝が、３・３メートルの追い風参考ながら９秒８７で優勝した。今季初戦だった桐生は中盤でトップに立ち、電気計時では日本初の「９秒台」で走った。１９歳の桐生が「１０秒の壁」を今季初戦でやすやすと破った。電光掲示の「９秒８７」を見ると小さくガッツポーズ。スタンドの歓声に応え「９秒台を体感できた」と会心の笑みを浮かべた。

　「陸上・織田記念国際」（２９日、エディオンスタジアム広島）
　男子１００メートル決勝が行われ、リオデジャネイロ五輪男子４００メートルリレー銀メダリストの桐生祥秀（２１）＝東洋大＝が、１０秒０４（向かい風０・３メートル）で優勝した。
　桐生は３月の豪州での今季初戦は１０秒０４、２３日の出雲陸上では向かい風条件では自己ベストとなる１０秒０８をマークしており、１３年大会で日本歴代２位の１０秒０１を出した今大会で９秒台への期待が高まっていた。