リュウソウジャーの主役を奪う?!吹越満と佐野史郎の存在感
【「騎士竜戦隊リュウソウジャーTHE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!」丸見えソウル(9)】 5月22日に行われた制作発表会見でのこと。あるベテラン俳優が挨拶から一撃かました。出演者として紹介され「はい!リュウソウ茶色!龍井尚久役、吹越満です!」。リュウソウジャーに変身するキャストたちが初々しく挨拶したのを受けて会場の笑いをかっさらっていったのが名優・吹越満。演技経験の浅いキャストたちにあって、ある種の“重し”や、“安心感”を与える存在となっている。
吹越はこの作品にかける思いをこう語っている。「(自分は)出番とかシーンは少ないわけですけども、真剣に傷跡を残そうと思ってやっています。みんながライバルだと思ってやっていまして」と打ち明けると、1年間放送されるテレビシリーズについても「あらかた企画としては決まってるかもしれないですけど。東映の上層部とか、テレ朝の上層部が見ていて、『このままいくんじゃなくて、この吹越っていうのをメーンにしろ』って、途中からストーリーが変わっていくぐらいの傷跡を残そうと思って。最終的に地球を救ったのはリュウソウ茶色だったっていうところに僕は持って行こうというふうな勢いでやっていますから。(僕に)潰されないように」と宣言して、報道陣や関係者をわかせていた。
実際の撮影でも、東映の丸山真哉プロデューサーによると「なんてことのないところが面白くなるように、すごい考えてくれている」のだという。例えば第1話。動画撮影に出かけていた娘・龍井ういと電話するシーンで、ういが自分の居場所を「山梨県アマゾン市」と答える台詞がある。全てを見透かした吹越演じる尚久が「じゃあ遠いな」と返す、というのが台本上のやりとりだったが、ここにアドリブで「高速バスで帰ってくるの?」と続けるなど、新たに台詞を入れ込んだのだ。ういが答えるシーンを先に撮影してしまっていたため、うい役の金城茉奈に、自転車で帰ってくることなど、当初は予定していなかった台詞を追加で吹き込んでもらって、シーンを完成させたのだという。
もちろん、若手を押しのけてでも自分が前に出てやろう…というわけでもない。この会見では、「若いキャストたちはこれから撮るカットの台詞をずーっと(確認を)やってるんですよね。何回も何回もね。みんないつもスタジオでもそうなんだけど、本番始まるギリギリまでやって確認をしているんですけど、一番NGが多いんですね。でもすごいなあと思って。僕も見習わなきゃいけないかなと思って。NG自体が嫌じゃないNGっていうのかな。僕はこんな年になっちゃいましたけど、なんかここまできちゃったので。本当にうらやましいなと。そのままいってほしいなと思ったりして(います)」と、ジョークを交えて、若手キャストのまっすぐさを温かく見守っている様子を感じさせた。
映画でゲスト出演する佐野史郎も、同じような心情をのぞかせている。「監督からの厳しい指示に対して食らいついていく一ノ瀬さん。主演という立場であることもあるからでしょうけれども、とにかくひたむきな姿に胸を打たれました。そういう現場は本当にいいなと思いました。他の皆さんも同様です」と語りつつ、自身が島根県松江市出身であることから、「リュウソウジャー」が神話を織り込んだシナリオであることに、「放送では勾玉も出てきましたし。勾玉はこの国ができる以前から古代の人たちがつくっていて、大切なものとして伝えてきたものですから」としみじみと語り「古代からの芸能、伝統がこういう形で息づいているっていうのが、本当にうれしく、若い人たちがそれを知識としてたとえ知らなかったとしても体で受け止めていることがオジサンとしてはとってもうれしいです」と後輩たちを思いやる言葉を投げかけていた。
残念ながら、この映画では吹越と佐野という名優2人が直接共演するシーンはない。制作発表会見では「フキとのシーンはないけど、俺たちは結局“アングラ”じゃん。そういうのって、なんかこう脈々と受け取ってきた感じがするんだけど。一緒のシーン何かやりたかったね」と語る佐野に対して、吹越が「そうですね」としみじみと応じるやり取りもあった。若手を時に包み込むような、そして時に作品のスパイスとなるようなベテランの演技が光っている。