奈良県立美術館が再開「開催中の展示・戦後のアート表現は、コロナ禍の今と共鳴するのでは」

5月14日に緊急事態宣言が解除され、19日から「奈良県コンベンションセンター」(奈良県奈良市)など県の施設が再開した。

2月28日の休館から約2カ月半ぶりに再開した「奈良県立美術館」に、約1カ月遅れで開幕を迎えた特別展『熱い絵画 大橋コレクションに見る戦後日本美術の力』のことや新型コロナウイルス対策などを訊いた。

通常であれば、年間を通じて1日平均250~260人ほどの入館者がある同美術館。再開初日の19日で55人、20日(15時40分時点)で73名の入館があった。鑑賞を終えたばかりの藤井さん(奈良市在住77歳男性)は、「コロナ自粛明け初の美術館だった。特別展に毎回来ているけど、久しぶりに来れて良かった」と話す。

同館では、公式サイトの「みなさまへのお願い」で、府県をまたいでや団体での来館を控え、マスクの着用や咳エチケット等を来館者にお願いしている。入口には消毒液を用意し、場合によっては検温もできるようにした。ほかにもコインロッカーや手すり、エレベーターのボタンなど人の手が触れる部分は消毒し、職員はマスク着用、検温等により体調管理をおこなう。

特別展は、関西の企業家・化学者である大橋嘉一氏(1896~1978)のプライベートコレクション『大橋コレクション』を紹介。氏が収集した1950年代後半から1970年代初めの日本の現代美術作品(約2000点)のなかから、戦後日本絵画の秀作90点が一堂に会す。

「本展に登場するアーティストは戦争を経験している人が多い。敗戦から再出発し、アーティストが何をできるか試みた結果、作品に厚みが増している。幸か不幸か、この時期(コロナ禍)に開催することは、戦後の焼け跡のなかから再出発したアートの表現と何か共鳴するのではないか」と安田篤生学芸課長。当時の作品には、「絵なのだけれどモノである。絵というモノのインパクトでみせる。最近のアートではあまりみられない泥臭さのなかにアートのエネルギーがある」と説明する。

同展は、足で描くアクション・ペインティングで知られた白髪一雄など現在でも知名度がある作家から50~60年代に活躍したものの忘れ去られてしまった作家にも再び光をあてる。新型コロナにより、期間中の講演や学芸員解説はすべて中止だが、同館の公式ツイッターアカウントで学芸員による出品作家の一口解説も行われている。今後の状況によっては、動画配信も検討しているとのこと。会期は7月5日まで。

取材・写真/いずみゆか

(Lmaga.jp)

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