イケメンレスラー飯伏、次の標的は…
プロレス界に今、かつてない追い風が吹いている。特に今注目されているのがプロレス好きの女子、略して「プ女子」だ。新日本プロレスでは会場の3~4割を女性が占め、各種メディアでもプロレス女子特集が組まれるなどちょっとしたブームになっている。
現在の新日本プロレスでは、棚橋弘至、中邑真輔、オカダカズチカ、飯伏幸太らイケメンのトップ選手たちがプ女子人気をけん引している。昨年12月には、男子では異例のグラビア写真集も発売された。
こうしたプ女子現象を受けて、端整な顔立ちとシェイプアップされた肉体美で女性ファンを魅力し、3月のニュージャパンカップでも優勝した飯伏を直撃。プ女子人気について分析してもらい、さらには今後の展望について語ってもらった。
「(プ女子ブームは)気づいたら言われ出してて、全然実感はなかったですね。言われてから、たしかに女性が増えたなと。イケメン?自分では全然思わないです。女性にも波があるのでは?ファッションのように。草食男子の次は肉食男子みたいな?肉体のトレンドも、やせ型、細マッチョから、ボリュームのある肉体へだんだん来たのかなと」
女性のプロレスファンが増えるということは、新規ファンを獲得するということでもある。数多くのオリジナル技を開発している飯伏は、新規ファン獲得へ見た目のわかりやすさもプロとして心がけている。
「跳び技はわかりやすいし、見たことない人でも『おっ』と感じると思う。ヘビー級に体重を増やしたのもあって本当は跳び技の比率を減らしたいけど、そういう事情もあって減らしてないんです」
新日本との“二刀流”で所属しているDDTでは、プロレス会場以外の観客を取り込もうと路上プロレスも行っている。これまでも遊園地や本屋やキャンプ場、さらには居酒屋やショッピングモールなどあらゆる場所を戦場にしてきた。
「本当に知らない通りすがりの人にも見てもらえるので、それで少しでも新しいお客さんがついてくれればうれしいですね。実は、結構そういうシチュエーションで『初めて見ました』と言ってくれるのが若い女性なんです。それがきっかけで試合まで見に来てくれるのはだいたい若い女性が多いですね」
学校で技を掛け合うなど根っからのプロレス少年だった自身の原体験を振り返っても、男性に比べて女性にとってプロレスを知る機会が少ないことを念頭に置いている。
「男性はゲームや漫画やプロレスごっこなんかでプロレスを知るきっかけがあるけど、女性はほぼ見る機会がない。だからそのきっかけになるのが路上プロレスじゃないかなと。プロレスを知る窓口になりたいし、いろんな所でやりたい。地上波のテレビにも出て広めたい」
プロレスを広めるためには、既存の概念を壊すことも辞さない考えだ。ファン拡大のために、対戦相手について飯伏はこんなことも言っていた。
「お客さんが来るなら相手は誰でもいいんです。野球選手でもサッカー選手でもいい。初めてプロレスを見るファンがいてくれた方がいいので、他のジャンルがいいですね。プロレス女子を増やすには女性ファンの多い相手がいいです。俳優さんでもいい」
徐々にヒートアップしてきた飯伏の口からは、思わぬビッグネームの名前も飛び出した。
「僕が調べた中では、Twitterのフォロワーでいうとダルビッシュ選手(レンジャーズ)がいちばん多かったです。なので、ダルビッシュ選手と戦いたいですね」
3月に右肘側副靱帯の損傷が判明し、トミー・ジョン手術を受けたばかりの日米通算132勝右腕との対戦を熱望。またプロレスラーの性として、相手の弱点を狙う考えも明かした。
「右腕を狙います。破壊しましょう」とキッパリ。「ファンがいちばん多い人とやりたいです。そして試合を通して、相手のファンをぶん取ります」と宣言した。
さすがに、飯伏対ダルビッシュの夢のカード実現の可能性は低いだろう。しかしかつては、力道山が木村政彦戦で、あるいはアントニオ猪木がモハメド・アリやウィリエム・ルスカとの異種格闘技戦を敢行して世間の注目を集めた。それと同じように、人があっと驚くようなファイトを見せたいという選手たちが、プロレス再ブームの起爆剤になろうとしている。(デイリースポーツ・藤川資野)