ひと振りにかけた代打男が人気鉄板焼き店を経営 カープOB原伸次さん
広陵から広島に入団し、代打の切り札として活躍した原伸次さん(55)。現在は広島市内の鉄板焼き店「Haraya」のオーナーとして店を切り盛りしている。現役時代、勝負強い打撃でファンを沸かせた男は、今は自慢の鉄板焼きメニューでお客さんの舌を喜ばせている。
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広電「十日市町」の電停から徒歩2分のところにある「Haraya」。テーブルと座敷合わせて約30人が入れる店内は、いつもお客さんで賑わっている。オープンキッチンの大きな鉄板の前に立った原さんは次々と入る注文に手際よく対応し、出来たての料理を提供していく。
人気メニューは「ホルモン焼き」や「手作りぎょうさ」など。ステーキなどの肉料理はもちろん、揚げ物、サラダ、ご飯ものなどメニューは80種類以上ある。カープの試合がある時は店内のテレビに中継が流れ、ファンの一喜一憂する声が上がる。「忙しくて、なかなか試合を見る暇がなくて」と苦笑する原さんだが、時にはお客さんとの野球談義に花を咲かせることもある。
95年の現役引退後、広島や中日でコーチを務めた。06年の中日退団後、約半年間、東広島市の鉄板焼き店で修行。07年6月に店を構えると、すぐに人気店となった。オープンから今年で12年目。「無我夢中の11年でした。野球をしていた頃とは比べものにならないぐらい早かったですね」。最近は原さんが元カープ選手ということを知らずに訪れるお客さんも多いそうで、「おいしいという評判を聞いて来てくれるみたいです。うれしいですね」と顔をほころばせる。
原さんは広陵から80年度のドラフト4位で入団し、4年目の84年には日本一を経験。阪急との日本シリーズでは第5戦で今井雄太郎から代打安打を放っている。レギュラーの座はつかめなかったものの、勝負強い打撃はチームに欠かせず、代打の切り札として活躍。86、91年にもリーグ優勝を味わった。
「自分の中ではチームの勝利に貢献できたと感じたのは最後の数年だけ。その程度の野球人生ですよ」と謙そんするが、91年には代打で・324、13打点を記録して優勝に貢献。93年にも代打で・340をマークし、その年の代打成績ではリーグトップの数字を残すなど、往年の赤ヘルファンの間では今も背番号27の勝負強さは語り継がれている。「華々しい野球人生ではなかったけど、ひと振りにかける代打という仕事は自分の性分に合っていたのかなとは思います」と振り返る。
バットから包丁とヘラに持ち替え、料理人として生きる原さんの目には、現在のカープはどんなふうに映っているか。「僕が入団した前年までカープは2年連続日本一。投手も野手もすごいメンバーがそろっていました。今のチームもその時と遜色のないメンバーがそろっていると思います」。OBとして期待するのはもちろん34年ぶりの日本一だ。
原さん自身も精進の日々は続く。「オープンから11年たったといっても、まだまだ自分はプロの料理人だとは思っていません。これからもずっと料理人としての修行は続くと思っています。あと5年で還暦なんですけど、くたばらんように頑張らんといけんね」。そう話すと、現役時代と変わらない甘いマスクから柔和な笑みがこぼれた。(デイリースポーツ・工藤直樹)
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