元阪神ドラ1左腕の横山雄哉さん アパレル業界で全力投球 元チームメートとブランド立ち上げ 「街に野球という楽しみを」コンセプト

 2014年のドラフト1位で投手として阪神に入団し、20年に現役を引退した横山雄哉さん(29)は現在、アパレルの世界で日々奮闘している。商品の入った段ボールが積み上げられ、部屋の奥にはミシンが並ぶ。奈良県内の“小屋”が今の舞台だ。

 「現役時代から服が好きで。野球と全く違うことがしたかった」

 入団2年目にはプロ初勝利を挙げたが、けがに苦しむことも多かった。18年に育成選手、20年に支配下に返り咲くも、同年の11月4日に戦力外通告を受けた。

 「ファームで一年間投げて、来年勝負かなと思ってるときの戦力外だったんで。頭真っ白ってこのことかみたいな。あの瞬間は忘れられない」

 現役引退後、一年間タイガースアカデミーでコーチも務めたが、進路に悩んでいた。そんな時、所属していた草野球チーム「Rat’s」にアパレル関係のメンバーが多かった縁もあり、「デザインとか加工とか、どうやったら服ができるか学びたかった」と22年1月、株式会社SIR(シール)に入社した。

 商品の梱包(こんぽう)や出荷作業、夏には汗だくになりながら倉庫で作業することも。

 自身の顧客への営業も行い「お客さんの目線となって寄り添いながら。僕、堅いのがあんまり好きじゃないんで、フランクに話し合いながら一緒にやっていくのは意識してます」と明かす。

 ただ、ずっと野球に打ち込んできただけに、初めはわからないことだらけだった。

 「パソコンすら触ったことなかったんで。これが仕事かみたいな。最初はメールするのもおもしろかった。『お世話になります』って知らなかったですもん。あ、これやらなきゃいけないんだって(笑)」

 大好きな服に関してもいわば無知。「いろんな服を見まくってました」と素材や加工、デザインなどを一から学んだ。

 大変な面もあったが「何もかもが新鮮すぎて楽しかった。最初はワクワクしてたのは覚えてますね。不安はなかった」と振り返った。

 阪神時代の先輩、山本翔也さんと「アパレルしたいよねとずっと話してた」といい、22年5月には一緒に同社内でブランド「GAUCHER(ゴーシェ)」を立ち上げた。

 2人とも左腕ということからフランス語で「左利き」を意味する同ブランド名に。

 「街に野球という楽しみを」というコンセプトの元、Tシャツやパーカなど野球とストリートファッションを組み合わせた商品を販売。月曜から金曜の週5日、朝10時から19時まで会社の業務を行い、19時以降は自身のブランドの作業を行う日々を過ごしている。

 プロ野球選手からアパレル業界に転身する人はあまりいないといい、ブランド設立から約1年がたった今でも試行錯誤の毎日だ。

 「最初は阪神ファンに売れて、いい感じでもそこからどう広がっていくか。いい状態で継続させる難しさを感じてる。きっかけをつかむまでいろいろ試してます」

 失敗も経験した。

 「思ってたのと反応が違ったのもありました。在庫を抑えてたのが売れて在庫もうない、再販だというのもあったし。これはいけると思って在庫積んだやつが全然伸びないこともあった」

 色物にも挑戦したが、やはり売れるのは白や黒の商品。「有名なブランドなら買う人もいると思うんですけど…でも色物ないとサイトも映えないし」と苦悩した。どのような商品が売れるか、ある程度はわかってきたが、未知の部分もある。

 「新しいデザインを出すの怖いですよ。売れるのかなみたいな。データを見て会社と話し合いながらやってます」

 商品やサイズによって在庫数を変えるなど、リスクを減らすことは心がけるが、失敗を恐れず挑戦は続ける。

 「リスクがなかったら何にも見えないからね。ローリスク、ハイリターンなんかないから。野球だって、フォームを変えますっていったらリスクもちろんあるじゃないですか。その中でいろいろよくなると思ってやってる」

 今後については「野球してる人に着てもらいたいっていうのはもちろんあります」と理想を明かした。

 「野球やってる高校生って服に興味ない子も多い。大学に入ってから気軽に買えるみたいのもいいかなと思ったり」

 ブランディングも試行錯誤している段階だが「翔也さん、会社と方向性合わせて一歩ずつやっていければ」と、地道に取り組んでいく。野球とアパレルをつなげる事業も思案中だ。

 「会社で翔也さんと『元プロ野球選手が』みたいに野球教室とかできたら。僕がいる強みってそこかなと思ってるんで」

 野球同様、好きなことにはのめり込むタイプ。転身後一年以上がたった今でも「まだまだ知らないことだらけ。いろいろ学びたい」と目を輝かせる。そんな元虎戦士の原動力は何か。

 「野球では活躍できなかったので、新たなステージ、アパレルの世界で成功すること。これが僕の最大のモチベーション」

 第二の人生もがむしゃらに突き進む。

(デイリースポーツ・山村菜々子)

 ◇横山 雄哉(よこやま・ゆうや)1994年2月21日生まれ、29歳。山形県出身。現役時代は左投げ左打ちの投手。山形中央高から新日鉄住金鹿島を経て2014年度ドラフト1位で阪神に入団。16年5月4日・中日戦(ナゴヤドーム)でプロ初勝利を挙げたが、18年8月に左肩手術を受け育成選手に。20年に支配下復帰も同年オフに戦力外通告を受け、現役引退を表明した。通算成績は9試合登板、3勝2敗、防御率4・67。

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