かつての虎エース・能見篤史が引退「やりきった」紆余曲折の野球人生
かつて阪神のエースとしても活躍したオリックス能見篤史投手兼任コーチが今季限りで引退しました。紆余曲折あった野球人生でしたがその表情は晴れやか。さらば〝世界一のワインドアップ〟…ノウミサン、愛してる!
公開日:2022.11.14
投手陣の中心として猛虎を支えるまでになった能見でしたが…ある出来事が勃発します。今も語り継がれる「能見さん嫌い」事件です。
【2012年6月10日デイリースポーツ1面より】
◆マートン衝撃暴言「能見さん嫌い だから…オリに点あげた」
阪神のマット・マートン外野手(30)が9日、四回の緩慢な守備を問われて逆ギレし、暴言を連発した。「俺は能見さんが嫌いだから、オリックスに点をあげたんだ」。もちろん本心ではなく、打撃不振などが原因の焦燥を抑制できなかったのだろう。ただ、不問とされるには、あまりにショッキングで重すぎる失言だ。
(中略)
「レット ゼム スコア(敵に得点させてやったんだ)」
いつもは陽気な助っ人から、耳を疑う英語が飛び出した。「前進守備をしていたが、本塁で刺そうという気はあったのか」との質問に対する答えだった。すぐに球団通訳が「冗談です」と取りなした。だが、プッツンした助っ人のいら立ちはなかなか収まらなかった。
「ニルイ、ドウゾ(塁を2つ進ませてあげた)。アイ ドント ライク ノウミサン。ワカリマスカ?」
むろん、本心ではない。当然だが、もしも本心だったら大変なことだ。
その後、この発言に対して球団はマートンに「口頭注意」して〝解決〟となりましたが、能見とマートンは不仲である、という印象はファンの間でくすぶり続けていました。
この問題が完全に解決となるのは年をまたぎ、次のシーズンを待たねばなりませんでした。
【2013年4月10日デイリースポーツ1面より】
◆マートン4番の一撃!能見とお立ち台ハグ
忌まわしき過去に自ら終止符を打った。本拠地開幕戦でのお立ち台。インタビュアーが質問しようとすると「チョット、マッテ!」とさえぎった。そして隣にいた能見に抱きつき「ノウミサン、アイシテル~!!」。宿敵の開幕7連勝を止め、まさかの展開に聖地が大歓声に包まれた。
(中略)
昨年6月、緩慢な守備について問われた際に「アイ ドント ライク ノウミサン」と暴言を吐いた。冗談のつもりで言った一言が大きく報道された。思い悩み、夏場には関川コーチとも衝突。「何で自分だけ…」。球団関係者にこう漏らすほど、助っ人はあの一言で追いつめられていた。
その呪縛を断ち切り「きょうで終わらせたい」と言った。能見も「何となく感じてました」と受け止めた。心のかたすみに残っていた苦い記憶。もう虎の4番を縛るものは、何もない。
先発エースから中継ぎに配置転換
虎の先発エースとして活躍してきた能見でしたが18年からは中継ぎに配置転換。新たな役割で見事な輝きを見せます。
【2018年5月31日デイリースポーツ1面より】
◆能見、中継ぎ 39歳新境地で復肩へ 2軍で再調整中の阪神・能見篤史投手(39)が、6月1日からのウエスタン・ソフトバンク戦(筑後)で中継ぎ起用されることが30日、分かった。1軍のブルペンは左投手が手薄な現状で、香田投手コーチとの話し合いで決定された。
(中略)
経験豊富な背番号14に、大きな決断が下された。中継ぎへの配置転換が決まった能見は、自らに言い聞かせるように口を開いた。「やれることをしっかりやるだけなので」。この日、香田投手コーチが鳴尾浜に足を運び、能見と話し合う中で、起用方針が固まった。