コロナ禍の助っ人選手は本当に大変 「東京五輪」で働いて実感、前DeNA監督にも遭遇

阪神愛あふれる姿のまま東京五輪の海外メディア向け運転手として働いてきました
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 僕は自発的に動くよりも何かを勧められたら挑戦するタイプだ。来日もそうだったし、このコラムを書き始めた経緯もそう。そして今年の2月、知人に「向いていると思うよ!やってみたら?」と乗せられて、僕の「東京五輪」がスタートしました。

 大会開幕から3週間、某メディア専用の運転手として働いてきました。そもそもオリンピックにはそこまで興味がなく、東京にも10年以上行ってなかった。車の運転だって自信があるわけでもない。けれど、10代の頃の夢のひとつがスポーツジャーナリストになることだったから「こんなに近くでメディアの仕事を観察できる機会はないだろう」と決心したんだけど、期間中にいくつかの発見があったので紹介したいと思います。

 (1)家族と離れ離れになるのは容易ではない

 今回は妻と2人の息子を関西に置いての“単身赴任”。たった3週間でも家族との時間がないことは、とても寂しい経験だった。やはりコロナ禍でプレーする、助っ人選手は本当に大変だ。「家族のもとに戻りたい」と訴えて退団した巨人のスモーク選手、西武のメヒア選手、オリックスのロメロ選手の気持ちがとても理解できるようになった。野球選手だけでなく、出張が多いサラリーマンも大変だなぁと改めて思った。出張はどの国にもあるから仕方ないけれど、理解できないのは単身赴任。海外では考えられないことだし、奥さんや子供もかわいそう。僕自身も今後は家族の存在を当たり前に思わず、大切にしていきたい。

 (2)東京を舐めてはいけない

 どの車にもカーナビがついているから「大丈夫だ!会場をいくつか覚えたら道に迷うことなんかない」と思った自分は馬鹿だった。東京の道路事情は、僕が住んでいる西宮市(兵庫県)と別世界。ましてや大事なお客様を乗せている時は、プレッシャーがすごい。これからはもう、自分の運転能力の過大評価を絶対にしない。そして東京の大きさを侮らない。

 (3)英語はオールマイティー

 普段の仕事は英語講師なので、学生には「英語ができると有利だよ」と常に伝えているけど、今回の仕事で実感した。海外メディアはもちろん全員が英語で話している。ドライバー同士の国籍は異なっていたけれど共通語は英語。3週間はまるで国内留学のようなもので、ほとんど日本語を耳にしなかった。何人かのドライバーはフランス語圏出身だったため、僕が来日する前に得意にしていたフランス語の能力がよみがえったのもうれしかった。五輪のような国際的な催しに参加したければ、やはり英語は必須。他言語もプラスアルファになる。

 (4)“虎友”はどこでも作れる

 仕事中も堂々と阪神タイガースグッズを身に着けていた私。普通の感覚なら「おかしい」と思われるかもしれませんが、意外とプラスに働いていた。どこに行っても、誰かが阪神タイガースのマウスカバー、シャツ、ベストに気づいてくれた。相手からすれば話しかけるキッカケとなっていたようだ。ある時は国立競技場のお巡りさんと、またある時は京都出身のコロンビア在住のメディアの方と。そしてある日、いきなり駐車場で「I like your Hanshin Tigers vest(その阪神のベスト、いいね!)」と声をかけられた。「この声、知ってる」と思ったら、なんとDeNA前監督のアレックス・ラミレス氏。この時は短い会話にはなりましたが、SNSを通してつながっていたので、数日後に電話で20分ほど野球の話をしました。やっぱり阪神のベストを着ててよかった。

  ◇  ◇

 終わってみれば五輪に関わる仕事に携わったことは自分の中で大きなプラスになった。ほんの少しだけだけどオリンピックに貢献できたこと、そして何より、これからの人生を思い切り生きて行く勇気を貰えたことに感謝しかありません。

 ◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。1998年に初来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から在住。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」で阪神情報を配信中。

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