なぜ?アメリカの大学生が一瞬で阪神ファンに 「これはただのレギュラーシーズンの試合でしょ?」
今季の阪神タイガースは、今のところ順風満帆とは言えない。昨季は38年ぶりの日本一。ところが今年は…。カナダ出身でファン歴10年の筆者は、もどかしい毎日を送っていた。そんな筆者は5月上旬に2度、甲子園球場に足を運んで、モヤモヤした気持ちが晴れる経験をした。
1度目は6日。この日はアメリカの大手テレビ局CNNからの依頼だった。同局は世界に向けた旅番組を制作しており、このたび大阪(関西)を特集するのだという。アメリカから見ると日本といえば野球、野球と言えばその熱狂的な応援でアメリカでも有名になりつつある阪神ファン。ということで、英語ができる筆者に白羽の矢が当たった。
試合前、球場外周のミズノスクエアで熱狂的ファンの様子を撮影。そこで出会った原口選手の大ファンの言葉が心に刺さった。
「大谷より原口やで!」
えー?世界の大谷翔平と原口選手を比べるの?そして原口を選ぶの?で、その理由が独特だった。
「阪神という伴侶を随分前からめとった感覚で応援している。たとえ他にもっと若くて魅力的な誰かが現れてもこれまでずっと付き合ってくれた〝パートナー〟を見捨てるわけにはいかんやろ」
結局この日は雨天中止。だからこの一言が1番の収穫だった。何があってもどんなに苦しくても阪神と共に歩み、応援をやめない。苦しい時こそ愛を示すんだ!大谷より原口や!
2日後、今度はアメリカの旅行会社JapanBallの依頼で再び甲子園球場へ。サウスカロライナ大学の学生たちを連れて、ベーブルース記念碑、素盞嗚神社や甲子園歴史館を見学し、その後に一緒に試合を観戦。試合中に10人ほどの学生さんに話を聞いたら、全員がトリコになっていた。
「こんな応援は初めて見た!」
「球場の熱気に溢れる雰囲気は最高!」
「これはただのレギュラーシーズンの試合でしょ?アメリカのプレーオフよりもボルテージがすごい!」
実はこの日の得点シーンはわずか1度。それでも彼らが魅了されたのは、阪神ファンが織りなす甲子園の空気の賜物だった。筆者も10年前の甲子園デビューは完封負けの試合。にも関わらず〝阪神中毒〟になってしまった。その初心に戻れた一日になった。
何があっても応援する大切さ。満員の甲子園で試合が見られるありがたさ。どちらも深く心に刻んでおかないと。少しぐらいチームの調子が悪くても感謝の気持ちを忘れちゃダメ。原口ファンの〝ベテラン〟とアメリカからやってきた〝新米ファン〟に喝を入れられた気分です。アレンパを祝うため、今年も精一杯応援しようっと。
◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。1998年に初来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から在住。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」で阪神情報を配信中。