王女メディアの指輪で牌操った平幹さん
蜷川幸雄さんの訃報を聞き、ちょうど40年前に放送された日本テレビ系「大都会 闘いの日々」の第8話「俺の愛した ちあきなおみ」で同じ空間にいたことを思い出しました。私がテレビの生放送中に「人を殺した」と告白する場面があり、蜷川さんは番組のディレクター役でした。
演出家・蜷川さんの代表作の一つに「王女メディア」があります。その主演俳優である平幹二朗さんは蜷川さんの盟友ですが、私は平さんのプライべートでの“麻雀仲間”でした。同じ事務所だった時期があり、飲み会から発展して麻雀をやろうということで、平さんのご自宅で卓を囲むようになったのです。伊豆の下田温泉まで麻雀をしに行ったこともありました。
平さんのお宅に麻雀に行くと“食”が充実していました。仲間の1人が好きだった高級カマボコが出たり、バカラやティファニーのグラスで飲み物を楽しみました。平さんはエビまでむいてサラダを作って下さったり。冷凍庫にはテニスボールより大きな薄茶色の団子がビニール袋の中に入っていて、それはご自身で取った自家製ダシ汁を固形にしたもの。ごろんと大きくて、おわん一杯分です。「僕は化学調味料が嫌だから自分で作るんだよ」と、おっしゃっていましたね。
私が麻雀で調子が良かった時のこと。「洋子さん、何でそんなにツイてるの?」と尋ねられ、その時、私はたまたま金の指輪をしていたので「金パワーだ~!」と言ったら、平さんは自分の部屋に行かれたんです。何を探してるのかなと思っていたら、しばらくして「王女メディア」の指輪を手に戻って来られたんですよ!実際に舞台でされていた大きな指輪をはめて麻雀牌を操る平さんでした。
近年では蜷川さん演出の「唐版 滝の白糸」(2013年)で平さんの楽屋を訪ねた時に「洋子さん、ごめんね。僕、夜の部まで休むから」って、置いてある寝袋にミノムシのように入っていかれました。体調に気を遣われていましたね。
そういえば、平さんのお部屋へ麻雀に行くと、浅草のお菓子がよくあったんですよ。あの頃、平さんは身体を鍛えていて、世田谷から浅草までリュックを背負って歩いていたのです!「舞台は長丁場だから、息が続かないとね」。スゴいな~と、いつも敬服して見ていました。