渥美清編(中)原宿から代官山でゴジラ

 渥美清さんの2回目は、東京・原宿から代官山まで、それほど遠くはない距離の間で起こった“あれこれ”を語ります。1970年代後半から年に1~2回、「ゴロゴロ会」という集まりが原宿の中華料理店であり、その帰り道のことです。当時、渥美さんはご自宅とは別に、代官山にマンションの一部屋を借りていました。

 人通りの少ない道。原宿と渋谷の間にある消防署のあたりを渥美さんと一緒に歩いていると、前から数人の女性が歩いて来ました。帽子を深くかぶった渥美さんに気づくと「キャ~ッ!!」って、オバケかゴジラに会ったような声を出すんです。「あら、渥美清だわ」じゃなくて「キャ~ッ!!」ですよ。国民的スターって、こんなに大変なのかって思いました。渥美さんは照れくさそうに挨拶しながら、女性たちの間を抜けていきました。

 私、その日、少し高いヒールのサンダルを履いていて、代官山に着いたらマメができちゃったんです。渥美さんは「これ履いて帰りなよ」って、デッキシューズみたいな靴を用意してくださり、それを履いて帰ったことがあります。そんな優しさのある方でした。

 私が車で渥美さんを代官山まで送ると言うと「大丈夫?」って心配そうなんです。「大丈夫よ。渥美さん、乗りましょうよ」と手招くと、「うん、うん」と返事しながら助手席に座るんですが、その後もキョロキョロあたりを見回したり…。女性ドライバーである私がどのくらいの技量なのかと不安に思われたのか、隣で身を固くしてるんです。「大丈夫?慎重にね」って何度も念を押されて。おかしいぐらいに慎重な人でした。

 「ゴロゴロ会」での渥美さんは、脚本家の早坂暁さんに「こういうのやりたい、ああいうのやりたい」と、おっしゃっていました。時々、ガス抜きじゃないですけど、寅さん以外のものに興味があって(役者なら当然ですよね)、何か違うことをやりたいという思いがあったようです。「僕は盆暮れだけ(映画「男はつらいよ」シリーズで)仕事しているようなものだから」と、口ではおっしゃっていましたけど。

 代官山ではお気に入りの洋食店「小川軒」で食事をして、俳句もこしらえる繊細な方でした。渥美さんにとって、あの街は独りになれる大切な空間だったのかもしれませんね。

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