‐好不調の波はどのように対処しているのか？

　今垣　いいエンジンを引けばいいですけど、悪いエンジンを引いたときは厳しいですね。

　佐藤　トップクラスの選手でも厳しいエンジンってあるんですか？

　今垣　それが各ボート場に何機かあるんですよね。こんなときは事故が起きやすい。Ｆや転覆で散々なことも…。

　佐藤　プロペラを調整してもダメなんですか？

　今垣　ダメなエンジンはホントにダメです…。

　佐藤　プロペラって何枚、持って行けるんですか？

　今垣　３枚ですね。基準が変わる前は５枚持って行けたんですが…。

　佐藤　たった３枚ですか。選択肢が少ないから、プロペラをエンジンに合わせるのが大変そうですね。

　今垣　そうですね。やはり５枚持って行けたときが良かったです。ところで自転車は何台も持って行っていいんですか？

　佐藤　はい。でも、２台が限度でしょうね。５台も６台も持ってきて乗り比べるなんて、想像はつきませんから。

　今垣　そうですね。

　佐藤　競輪選手って道具に左右されにくいですよ。ただ、落車したときは無理です。すぐにフレームとかが直らないですからね。だから、落車しても翌日のレースに参加したい人は、２台目の自転車を使用しますね。

　今垣　落車ってホントに怖そうですね。硬いバンクに生身をたたきつけられるんですから。

　佐藤　でも、ボートの転覆も怖いでしょう。

　今垣　１人で乗っているときにコケるのは大丈夫。軽傷ですね。でも、ほかのボートに（体を）ひかれたり、ぶつかったりすると大ケガです。

　佐藤　それはかなり怖そうですね。

　今垣　今まで何回くらい落車されましたか？

　佐藤　僕は１年に１回ペースで落車していますね。僕みたいな自力タイプは落車が少ないんですけど、後方からのまくりが好きですから、前にいる選手が転んでしまうと、避け切れずに一緒に転ぶことが多いんですよ。

　今垣　ガッチリした体格なら、落車しても僕みたいなひ弱な人間がケガしたときと違って、ダメージが少なそう。

　佐藤　いえいえ。交通事故なんかと一緒で、事故のためにどこかを鍛えることはしていませんから。誰が落車してもダメージは一緒でしょう。

　今垣　そりゃそうですね（笑い）。

　‐宿舎は先輩や後輩と同じ部屋になる。本音は１人でゆっくりしたい？

　佐藤　そうですね。岩手２人だけで参加しているときなんか、特にそう思いますね。

　今垣　なぜですか？

　佐藤　たまに全然知らない地域の人と同部屋になるんですよ。なぜか神奈川県の人と一緒とか。

　今垣　何を話していいか分からないですよね。

　佐藤　そうなんです。

　‐かつて競輪には「いびき部屋」があったらしいが…。

　佐藤　らしいですね。でも、今は１０８人（12レース制）もいますから。どれだけいびきがキツくても、普通に４人部屋に入れられますよ。

　今垣　１０８人ですか。すごい人数…。

　佐藤　６日制のＧ１なら１６２人も参加します。

　今垣　へぇ〜。

　佐藤　でも、成績不振なら途中帰郷させられますよ。最終日には99人しか残れないんです、

　今垣　厳しいですね。ボートは成績不振で帰らされることはありませんよ。

　佐藤　でも、成績が悪いときは…。

　今垣　正直、帰らせてほしい…と思うことがしゅっちゅうありますね。

　‐年末の大一番に向けての抱負を。

　佐藤　ＫＥＩＲＩＮグランプリに２年前に出たときは、賞金上位順だったので、早めからグランプリへ向けての調整ができなかったんです。今回は８月に権利（Ｇ１全日本選抜で優勝）を得て、計画的に調整できていますから、今年こそは獲りたいなと思っています。

　今垣　（賞金王決定戦前に）何度も「優勝します」って言ってきましたが、一度も結果を出せていません。今までは出られたことだけで満足していたような気がします。だからもう結果を出すしかありませんね。

　‐最後で申し訳ないが、この対談は今まで２回やって、まだ大一番で優勝者が出ていない。

　佐藤　それなら僕らでやりましょう。

　今垣　先にボートが始まりますからね。

　佐藤　お願いします。いい流れを作ってください。

　今垣　分かりました。これも何かの縁ですから、お互いやりましょう。

　佐藤　はい。やりましょう。