ロッテ永野投手の「広場恐怖症」治療に認知行動療法、暴露療法など…医師が説明
「町医者の独り言=45=」
ロッテの2年目左腕・永野将司投手(26)が「広場恐怖症」を患っていることを明かした。飛行機に乗ると飛び降りたくなり、死んでしまうのではと考えたり、新幹線などに乗車するのも困難が伴うという。兵庫県伊丹市の「たにみつ内科」で日々診察にあたっている谷光利昭院長が、あまり知られていないこの症状について説明した。
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広場恐怖症…聞き慣れない言葉だと思います。我々医師でも精神疾患に携わっていなければ、具体的なことを知らない人も多いのではないでしょうか。詳しい診断基準は割愛しますが、どのような病気であるかを簡単に説明します。
たとえば、永野選手のような飛行機をはじめ、電車、バス、車に乗っているとき、デパート、市場などで買い物をしているとき、何かの列にならんでいるときなど、人がたくさんいる場所にいると恐怖が出現してくるのです。恐怖が出現してくると、胸の痛みや締め付けられるような感覚となります。息ができなくなるように感じ、めまい、吐き気などの強い肉体的苦痛を伴うパニック発作のような強い肉体的苦痛が出現してきます。
人によって、だいたい同じ状況で出現します。わき上がる不安は現実には到底起こりえないものですが、それらの不安や強い肉体的苦痛が日常生活に大きな負担となります。周囲の人に理解してもらいにくいこともつらいことです。
治療としては、認知行動療法、暴露療法、薬物療法などがあります。認知行動療法とは、例えばデパートにいるとき、なぜ不安が浮かんでくるのか?という理由を詳細に書いて頂き、そのことに対して現実的には起こりえないということを、時間をかけて理解して頂きます。それを繰り返すことによりバランスのとれた思考回路を作成するといった治療法です。
暴露療法とは、実際に不安が起きる場所に遭遇して頂き、次第に慣れて頂くという方法です。不安が起きるといっても、「段階」を決めて不安が起こる程度の弱いところから順を追って遭遇することになります。実際に遭遇することが困難な場合は、想像することから始めていただきます。
2つの治療法は効果があるとされ、積極的に用いられています。また、患者さん自身で暴露療法を知らない間に繰り返すこともあり、自然治癒してしまうケースもあるようです。薬物療法は、抗うつ薬を用いて治療するケースがもあります。
いずれにしても治療法は、しっかりとある病気です。心当たりの方は専門家に相談して頂き、正しい治療を受ければ、よくなってくる可能性は高いと思います。