寝苦しい夜が増えてきて…「寝溜め」に効果はあるのか?医師が説明
「町医者の独り言=48=」
今朝も目覚めが非常にいいです。40代後半から睡眠の質や生活リズムを変えた影響か若いころに比べると良質な睡眠がとれているように感じます。夜中に数回は目が覚めてスマホで時間の確認をすることもありますが、起床時には比較的すっきりとしていることが多いように思います。若い頃とは明らかに睡眠の質が変わっています。
睡眠時間は、人それぞれ適正時間があると言われています。3時間から4時間くらいで十分な人、10時間以上寝る人など様々です。ですから、時間で睡眠の質を決めるのではなく、起床時や日中の爽快さで睡眠の質を検討することが大切です。
睡眠は、大きく分けるとレム睡眠、ノンレム睡眠があります。レム睡眠は、浅い睡眠なので夢を見ていることが多いのですが、目を動かす筋肉と呼吸を司る筋肉以外は動きません。よく言われる「金縛り」はこの状態で起こるとされています。意識はあるが、身体は動かないというやつです。
ノンレム睡眠は、深い睡眠で、脳も身体も真に休息している状態ですが、寝返りなどの動作はあります。さらにノンレム睡眠は4段階に分けられ、段階が進むにつれて、より深い睡眠になるとされています。レム睡眠とノンレム睡眠を合わせたサイクルは約90分とされ、そのサイクルを繰り返して睡眠が成立しています。多くの人が、この睡眠サイクルを1晩で4、5回繰り返して覚醒します。そのため睡眠時間は6時間から7時間半くらいあればいい、と言われることが多いのです。
しかし、年齢によって適正時間が変わってきます。赤ちゃんや成長期の子供と老人の睡眠は全く違います。60代以降になると、先ほどのノンレム睡眠の一番深い眠りである4段階目の一番深い眠りは、ほとんど見られなくなります。
誰もが理想の睡眠を取りたいところですが、仕事などの理由でなかなか理想の睡眠が取れない人も多いと思います。何かと忙しい現代人、週末に寝溜めをして1週間の疲れをとるという人もおられるのではないでしょうか?
「寝溜めってどうなの?」と時々聞かれます。睡眠はまだまだ未知な部分があり100%正確な解答はできませんが、寝溜めに頼るのは、良くないとは言えるでしょう。海外の論文にも、寝溜めをする習慣がある人は、肥満傾向になりやすく、糖尿病や心血管のリスクが増えるというデータがあります。
また、動物実験において2週間から4週間に及ぶ極端な断眠は、身体のバランスを崩し、免疫機能の低下を来し、死に至るという結果も分かっています。人間でこういった実験はできませんが、長期の断眠は運動失調、幻覚を来すことが分かっています。
夜間には身体のバランスを整える多種のホルモンが分泌されており、睡眠時間の短縮がそれらのホルモン分泌に影響を与え、様々な体調不良を来します。やはり、極端にかたよらずに、その人にあった睡眠時間をコンスタントに取ることに努めるべきでしょう。
ただ現実には、いつも適切な睡眠を取れる人ばかりではないかもしれません。そういったときは、10~20分ほど昼寝する習慣をつけたり、寝室に入る時間をいつもより早くしたりなどの工夫をされてはいかがでしょうか。
関連ニュース
編集者のオススメ記事
医療コラム最新ニュース
もっとみる新型コロナを数字から見ると…我々の周囲にある病気の怖さに気付く
薬物依存症では取り巻く人の教育も大切 ある良書から得た学び
天龍源一郎の小脳梗塞…滑舌&しゃがれ声には関係なし?医師が説明
医学で説明できない不思議な治癒の例がある…解明できれば患者さんの“希望”に
痛風になりやすい夏 プリン体が含まれていない蒸留酒ならOK? 医師が説明
寝苦しい夜が増えてきて…「寝溜め」に効果はあるのか?医師が説明
10連休も病院で仕事 改元、インフルエンザ、凄惨な事件…ある町医者が思ったこと
萩原健一さん死去…10万人に1人か2人の「GIST」とは 医師が解説
ロッテ永野投手の「広場恐怖症」治療に認知行動療法、暴露療法など…医師が説明
堀ちえみさん舌がん公表 見分けにくい初期症状…口内炎、歯周病などと類似
阪神・原口選手が大腸がん 20代の罹患は珍しいが怖がらず内視鏡検査を
インフルエンザの新薬ゾフルーザ “現場”ではどうなのか…
闘病中のNosuke 精巣がんによる胚細胞腫瘍とは
若いタレントに相次ぐパニック障害…医師が語る“理解されない”心の病
ドラマ「大恋愛」は貴重なドラマ 若年性認知症の問題点とは