【聞きたい】歌手になりたいです。周囲から「うまい、歌手になれる」と言われますし、何しろ歌うことが楽しいです。もちろん簡単なことではないと承知しています。でもどうしてもなりたいです。そのためには何が必要なのでしょうか。（２９歳・男性）

　【答えます】うーん。簡単そうで難しい質問ですよ。プロの歌手になるために何が必要か？と聞かれれば、何もないとしか言えません。ただ、歌手になるための方法はあります。

　現実的には、まず大会やオーディションに出場することです。今は全国各地で開催されています。またカラオケ番組などもありますね。そこで自分の歌を歌手や作曲家、レコード会社らプロの人に聴いてもらい、認めてもらうこと。つかんだチャンスを生かすことです。あえて言うなら、審査員との相性やタイミングなどチャンスに巡り合える運は必要かもしれませんが…。

　でも歌は不思議なものです。カラオケだけならプロ歌手の自分より上手な人はいますよ。でもどんな上手な方でも、１コーラスを聴くと２コーラス目は、もういい！となるのですよ。

　そこがプロ歌手との違いです。プロの歌い手はフルコーラスで聴いてもうまい。“いい”のですよ。つまりプロ歌手は、歌の上手下手でなく「いい」のです。

　歌い手は、聴いてくれる人がいて初めて成立する職業。聴いてくれる側が受け入れてくれることが大事なのです。極端な言い方をすれば、プロとしてあまり歌がうまくなくても、魅力があればいいのです。その人の人生観、味、重みを歌に込めて伝えられるかです。お客さまがお金を出してでも、聴いてみたい、という個性を持っているかどうかです。

　相談された方は、まだ２９歳ですね。まだまだ人生の経験を重ねていけば、歌にも味が出ていくでしょう。歌の上手に、それらを加えていってください。その意味ではまだまだこれからですよ。環境が許される限りは夢を追いかけてほしいですね。

　◆前川　清（まえかわ・きよし）長崎県出身、６９歳。「内山田洋とクール・ファイブ」のリードボーカルとして、６９年「長崎は今日も雨だった」でメジャーデビュー。「そして、神戸」「東京砂漠」などヒット曲多数。個性あふれる語り口でテレビ、ラジオ番組でも活躍中。