日本野球の良さとは カナダ出身阪神ファンの願い「MLB新ルールのすべてを追いかけないで」
新型コロナが5類に引き下げられ、ようやく〝ポスト・コロナ〟がスタートしました。これからは野球好きのアメリカ人が続々と来日して、NPBを生観戦するでしょう。コロナ禍の間、カナダ人の筆者は月に1度、ネット上で外国人タイガースファンを召集し、一緒に試合観戦していました。筆者以外の参加者の多くは欧米在住で、時差のため大人数は集まらない。それでも来日できない外国人たちと野球が見たくて、各々が「虎テレ」を通して一緒に応援していました。
今年は日本へ入国制限が緩和されたけれど、この企画は続行。先日も外国人5人で阪神タイガースを応援してました。そのうち1人は昨年途中からNPBに興味を持ち始め、MLB贔屓チームのメッツとの共通点を感じて、阪神タイガースファンになったという人物。そんな彼が面白い質問を投げかけました。
「日本プロ野球はメジャーの新しいルールを導入することはあるの?」。
多くの場合、MLBでの導入から2~3年後には日本でも取り入れることが多い。最近だとコリジョンルールや申告敬遠などです。すると彼は、近年に導入されたルールはどう思うかと追加質問。具体的には①延長戦でのタイブレーク②ピッチクロック③牽制球の制限-。筆者の個人的意見として「NPBにはどれも導入してほしくない」と答え、さらには日本文化をあまり知らない彼にその理由も伝えました。
①日本はアメリカと違って長い延長戦がそもそもない。延長12回の時点で決着がつかない場合は引き分けというスタイルも浸透しているのでタイブレークは不要。延長戦の魅力の一つは、ベンチに残っている投手陣が0を並べれるか、打線が1点をもぎ取れるかの駆け引きだよと。
②現代社会では早めの結果が求められるが、日本の野球は〝間を楽しむスタイル〟でいいと思う。武道には基本的に時間の制限がなく、じっくりと戦略を練って心体技を駆使して勝利を目指しますよね。見ている側としても、選手と一緒に考えて応援すると感動が増す。時間を制限してしまうと考える余地がなくなってしまうんじゃないでしょうか。
③牽制球も同じ。日本とアメリカの野球の大きな違いの一つはスピーディーなプレースタイルです。MLBでは盗塁が激減している傾向があるので、新ルールは盗塁企画数を増やすために仕方ないのかも。一方、日本では盗塁企画数が減っているように感じないので必要ないはず。
野球をはじめプロスポーツには進化があっていいと思う。だけど日本のプロ野球には、MLBで起こる全ての変化を追いかけないでほしい。MLBはMLBファンのために新しいルールを取り入れればいいし、日本は日本野球の持ち味を生かすべき。これからどんどん来日してくる〝野球好きの観光客〟にその素晴らしさを伝えてほしいです。
◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。1998年に初来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から在住。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」で阪神情報を配信中。
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