メジャーとマイナー、2つの契約の違い

 日本人選手がオフにメジャーリーグ挑戦を表明することは、今や当たり前となった。今年も楽天・田中がどの球団でプレーするかに注目が集まっている。一方で、元ロッテ・渡辺俊のようにレッドソックスとマイナー契約を結び、米球界に活躍の場を求める選手もいる。

 ところで、日本人選手が米球界に挑戦する際、よく耳にするメジャー契約と、マイナー契約。2つの違いは何なのか。

 まず、MLBの1チームが40人までと結ぶことができるのが、メジャー契約だ。その40人の選手枠(ロースター)に入った中の25人がベンチに入り、メジャーリーグの公式戦に出場できる。

 この公式戦に出場できる25人枠(アクティブロースター)が、日本球界で例えるならば、1軍選手に相当する。残りの15選手は原則、マイナーでプレーしながら25人枠に入る機会を待つことになる。

 ただ、9月1日からはアクティブロースターが40人に拡大される。つまり、40人枠に入っていれば「メジャーリーグの公式戦に出場する権利」は持っているということになる。

 40人枠に入れなかった選手は、マイナー契約となる。彼らは3A、2Aなどで結果を残し、メジャー契約を勝ち取らなければ、表舞台にすら立てない。

 日本球界で例えるならば、1軍でプレーすることができない育成選手のような立場となる。これが、日本で結果を残し、メジャーリーグへの挑戦権を得た日本人選手が、契約内容にこだわる理由の一つだ。

 渡辺俊や、12年にソフトバンクから海外FAした川崎(現ブルージェイズ)のように、マイナー契約でも米球界に挑戦する選手は増えている。ただ、メジャー契約とマイナー契約では、プレーできる舞台以上に、待遇でも天と地ほどの差がある。

 井川(現オリックス)は07年にヤンキースとメジャー契約を結んだが、結果を残せずに08年途中からマイナー契約となった。「2Aでは視野が広がった。僕が日本しか知らなかったのもあるけど、マイナーではハンバーガーがあればいい方だった」。12年の日本球界復帰後、特に食事面で苦労したことを明かしている。

 08年からカブスなどでプレーした福留(現阪神)は、ホワイトソックスに所属した12年にケガをきっかけにマイナー落ち。同6月に解雇され、同7月にヤンキースとマイナー契約を結んだ。当時の経験を振り返ると、移動面で苦労が大きかったという。

 「バスで平気で5、6時間の移動をする。その途中で休憩は1回だけ。普通の観光バスが2台はあったけど、シートのリクライニングも少しだけだった。腰が悪い年上の選手は床にマットを引いて、寝ていた。ほかの選手はそれをまたいでトイレに行ったりね。朝4時起きで飛行機移動もあった。自分でホテルを取って泊まる時は、若い選手なんかは2人で1部屋を取って泊まっていたね」

 日本では2軍もマネジャーがスケジュールを管理する。1軍との差はあるものの移動手段も、ホテルの環境も整っている。日米の各球団は抱える選手数が違うため、どちらがいいとは言う訳ではないが、米国は日本以上に環境の差が激しい。

 今後始まるメジャー各球団のキャンプには、マイナー契約の有望選手が「招待選手」として参加する。だが、40人枠の大半が決まっている状況で、世界各国の豪腕や大砲との競争に勝ち、残されたわずかなメジャー契約を勝ち取るには、圧倒的な力を見せなければならない。

 全選手にメジャーの舞台に立つ権利が与えられている訳ではないMLB。契約内容の違いは、プレーする上で大きな壁となる。

(デイリースポーツ・西岡誠)

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