日本に“恋”をしていたザックの言葉

 ブラジルW杯で惨敗に終わったサッカー日本代表。4年後のロシア大会に向けて、日本サッカー協会は7月24日の理事会後に、メキシコ人であるハビエル・アギーレ氏が次期監督に就任すると発表した。代表のタクトを振るう指揮官は、順調にいけば8月10日前後に来日予定。その後の就任会見での第一声に注目が集まる。

 W杯と共に、サッカー界では4年間という一つのサイクルが終わった。新たな4年間が注目されるのは当然だが、ここではこれまでの4年間を振り返りたいと思う。戦術的な分析や総括は既に星の数ほど論じられているので、今回は前任者であるザッケローニ監督について。就任会見時の言葉から、この4年間を考えてみたい。

 2010年8月31日、都内のホテルで日本代表史上初のイタリア人指揮官の就任会見が行われた。就任会見での言葉を振り返ると、ザックの考えは良くも悪くも本当にブレなかったように感じる。

 堅守を表す『カテナチオ』という言葉が代名詞ともなっているイタリアにあって、攻撃的なサッカーを志向する印象が強かったザックは、目指すべきスタイルを問われた際には「私のイメージは攻撃かもしれないが、自分では攻守にバランスのあるチームを作る監督だと思っている。代表でもバランスがあるチームにしたい」。4年間、指揮官が語り続けた言葉である『バランス』というフレーズが、最初に登場した瞬間だ。

 もちろんそれだけではない。好きな言葉を問われると再び「バランス」と応える一方で、ザックはこう言葉をつないだ。「日本語はほとんど分からないが、サムライブルーのサムライという言葉が好き。きのうから完全に日本人の気持ちにしないといけないと強く感じている」と語り、代表を率いる上で自身の心を“日本人化”する目標を立てた。

 そしてその言葉は体現された。日本語を完全に操ることはできなかったが、この4年間でザックは日本の地下鉄や箸を自在に使いこなすようになり、チューブに入ったワサビが大好物となった。

 また、こんなエピソードも聞いた。2011年のアジア杯を制した後、故郷のチェゼナティコに戻った際のことだ。地元の名士として講演台に立ったザックは、延々と日本の良さを説いたという。電車の正確さや日本人の律義さ、そして日本の暮らしやすさなど…。集まった人々が苦笑いを浮かべていても、日本の良さについて熱弁を振るい続けた。ザックは、紛れもなく日本に“恋”をしていたという。

 代表の指揮官としてはコンフェデ杯、W杯といった公式大会で、世界の強豪たちを自分たちのサッカーでねじ伏せるという究極の目標は達成できなかった。だが、この4年でアジア杯優勝に、5大会連続となるW杯出場権獲得、昨年の欧州遠征でベルギー、オランダといった強豪国とも渡り合った。「選手と積極的にコミュニケーションを取っていきたい」との信念通り、常に選手と共に高みを目指す一方で、課せられたミッションはクリアしたのではないか。

 そして就任会見から1394日後、イトゥで迎えた最後の会見。W杯本大会だけでなく、4年間を振り返ってもさまざまな想定外のことがあったことは想像に難くない。それでも「メンバーも戦術も私が決めたもの。責任はすべて私にある」と語るザックに、日本人らしい潔さを感じたのは、現地で言葉に耳を傾けた記者だけではないはずだ。

 4年前の就任会見に話を戻したい。目標を訪ねられたザックはこう語っていた。「今日言うのはちょっと変だが、このアドベンチャーがいつか終わるときには、ザッケローニのサムライはいいプレーを見せたという思い出を残したい」。日本代表を見続けていたファン・サポーター、そしてさまざまな形で代表に関わった多くの人たちには、それぞれどんな思い出が残ったのだろうか。

(デイリースポーツ・松落大樹)

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