【野球】阪神・秋山の変化!覚悟と新球と辛抱

 独自の視点からプレーの裏側に迫る「虎目線」。今回は秋山拓巳投手(26)にフォーカスする。過去7年でわずか6勝だった右腕が、今季早くも4勝(3敗、防御率3・00)を挙げている。週頭となる火曜日の登板を任されているまでに成長したが、その変化のキーワードは「覚悟」「新球」「辛抱」の3つ。巨人のエース・菅野の証言などをもとにブレークの秘密を追う。

 先週末は岡崎の2戦連続決勝打に甲子園が沸き、感動の涙に包まれた。苦節13年目。“金本再生工場”で輝く男は、11ホールドの桑原ともう1人いる。プロ8年目。過去7年でわずか6勝の秋山が、いかにして変化を遂げたのか。多角面からの証言をもとに分析する。

 秋山についてコメントを求めると巨人・菅野は即答した。「投手として四球が少ないのがいいですよね。制球力があるし、直球を両サイドに投げ分ける力があるので」。今季2度の直接対決では、5月9日(東京ドーム)は秋山が7回2失点で勝利し、同月23日(甲子園)は7回1失点で黒星を喫した。菅野は言う。

 「8年目だと成熟してくるころだけど、出てくるには本人の覚悟があったと思う。ウチにもそういう投手が出てきてほしいですね」

 表に見せない並外れた努力を想像し、チームに与える相乗効果を挙げた。菅野の言葉通り今季、秋山が与えた四球は6。規定投球回に達している投手では最少で、それでいて奪三振率8・40はリーグ3位だ。「覚悟」の言葉に秋山もうなずく。「7年間くすぶっていた…というのが自分でもあって。今でも自分を信用しきっているわけじゃないですが」。そう前置きした上で口にしたのは、大幅な投球スタイルの変化だ。

 全56奪三振の中で直球での奪三振は37。今季投げた962球中、直球の割合は47%にのぼる。昨年は35%。数字で見れば大きな違いが分かる。「直球が確実に良くなったというのが、ここまでこられている一番の要因です」。原点に返って直球にこだわった。覚悟を持って変化と向き合った。

 支えもあった。昨季、夏場に中継ぎ要員として1軍に昇格した際、藤川から助言を受けた。「球速を意識して、ムチャ投げでもいいから、思い切り腕振って投げろ」。目に見える変化を首脳陣に見せろ-というメッセージだった。この一言がきっかけで、球速は150キロ近くまでアップ。その直球は「新しい球種のイメージ」だと言う。加えて捕手・梅野が明かすのはシュートの存在だ。

 「これまでは直球と、カットの投手。シュートを投げるってことで、配球の幅がすごく広がった。外中心の投手が、ここぞで内角にいけるようになった」

 「覚悟」と「新球」があったとはいえ、7年間くすぶっていた投手。金本監督は「香田さん(1軍投手コーチ)や久保さん(2軍投手コーチ)のおかげ」と話す。昨季2軍で好投を続けながら、昇格機会はなかなか得られなかった。「一番は自信。元々、力がある子だった」。香田コーチは当時から能力を評価していた。「2軍でも腐らず努力していたことが大きい。(だから)もう一回、チャンスがあった時にモノにできた」。コーチの辛抱は秋山の自信につながった。

 7週続けて火曜日の登板。週頭を任されている。6日のオリックス戦では金子との対決だ。「クオリティースタート(6回以上で自責点が3以下)を目標にして最低限と思っていたけど。今は試合の流れを感じながら、先取点を与えないことが必要だと感じています」と秋山。3つの要素が重なり合った急成長。遠回りした分、下へと伸ばした根は頑丈だ。一歩、一歩、エースの階段を上る。

(デイリースポーツ・田中政行、※データ提供は共同通信デジタル)

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