【スポーツ】選手の夢を支える「夢プログラム」陸上・多田修平の成長のきっかけに
いわゆる“学生アスリート”だった多田修平(関学大)が、一気に陸上短距離界のニューヒーローへと駆け上がった。
今季、次々と自己ベストを更新し、世界選手権(8月・ロンドン)代表に内定。1日まで行われた西日本学生選手権の後には、世界を見据え、「鍛え直して臨みたい」と意気込んでいる。
多田自身が、成長のきっかけとして挙げているのが「夢プロ」と呼ばれる取り組みの海外遠征だった。
「夢プロ」とは「OSAKA夢プログラム」のこと。都道府県単位では例のない育成計画で、2015年9月から大阪陸上協会所属の選手を対象に行っている。20年東京五輪に大阪からオリンピアンを輩出することを目指して始まった。
東大阪市出身の多田は、発足時からの“1期生”。16年7月から17年6月末までの16年度は、日本選手権8位以内を目安に16人を選抜し、定期的な合宿の開催や海外遠征の支援などを行っている。
予算は年間5000万円。協賛企業67社、個人133人(17年3月31日現在)の寄付金を受けて活動しており、7月からの17年度は日本選手権6位程度を目安に選手を10人程度まで絞り、少数精鋭で強化を進める方針という。
大学側の理解もあり、積極的に制度を利用していた多田だったが、特に大きく影響したのが2月から3週間行われたテキサスでの合宿だった。これは「夢プロ」がコーディネートした海外遠征で、アサファ・パウエルの兄であるドノバン・パウエル氏から指導を受けるというもの。練習ではアサファ・パウエルとも顔を合わせ、スタートで腰が曲がる癖が徐々に改善された。
多田が参加した米国合宿の他にも「夢プロ」はこれまで、海外の有名コーチを呼んで行う国内合宿や、投てきや障害(ハードル)の選手を対象したドイツ・ベルリン合宿、オーストラリアでの強化合宿など、海外遠征を推進。上田重隆ゼネラルマネジャーは「日本人は違う人種の選手と競技をする機会が極端に少ない。そういう経験も積んでほしい」と言う。
日本選手権まで、海外を拠点にレースに出場しながら調整してきた選手もいたが、そういった例を参考に、来期以降は欧州を中心とした大会への選手派遣なども検討しているという。
五輪出場を夢見ていた多田は、その夢を徐々に手の届く「目標」へと変えている。夢を夢で終わらせない-。地元の支えが多田の強力な援軍となる。(デイリースポーツ・國島紗希)