【野球】雄星、死球で脱帽に意外な反応…日本では謝罪、メジャーでは敬意

 マリナーズ・菊池雄星
2枚

 観客席からどよめきと小さな悲鳴。抜けた151キロ直球が打者の頭部に向かっていった。2日、ロイヤルズ-マリナーズのオープン戦で、青いヘルメットが吹っ飛ぶヒヤリとしたプレー。マウンド上のマリナーズ・菊池雄星投手(27)が反射的に帽子を取った。日本人ならすぐに理解できる、「謝罪」を意味する行動だった。

 死球を受けたロイヤルズのブレット・フィリップス外野手はその時どう感じのか。「実は、あの時、彼の方を見てなくて、ベンチに戻ったら他の選手が教えてくれたんだ。『ピッチャーが帽子を取ってたぞ』って。こっちではそういうことをしないからみんな珍しがっていたよ」

 菊池が心配そうに見ていたことを伝えると、笑みを浮かべて「大丈夫。ヘルメットにかすっただけだから」。そして、チームメートから伝え聞いた菊池の行動を「打者への敬意」と表現した。

 そこで記者が「謝罪」の意味合いがあることを伝えると、「敬意を込めた謝罪だね」とフィリップス。「故意じゃないのは分かっているし、僕もけがはしなかった。その気持ちをありがたく受け取るよ」と言った。

 一方の菊池はマウンド上でどんな心境だったのか。登板翌日、死球の場面を回想した。

 「(帽子を)取りながら、『取んない方がいいって聞いたこともあるしな』と思いながら、でも、取りたいな、と思って」。

 反射的に見えた行動だったが、実は迷いがあったことを明かした。

 メジャーでは帽子を取る行為は、フィリップスが「respect」という単語を用いたように「敬意」の意味がある。文字通り、「脱帽」なのだ。

 2人を取材しながら思い出したのは、04年9月4日のマリナーズ対ホワイトソックス戦。マリナーズのイチローが先発左腕バーリーから4打席連続安打を記録した場面だ。4本目のヒットを打った後、バーリーはイチローに向かって帽子を取ったのだ。「参りました」と言わんばかりに。菊池の迷いはまさにそれ。ぶつけた相手に帽子を取って「参りました」の意味で受け取られたら、見当違いな行為として失礼にあたるのではないか、と。

 15年に西武で菊池と同僚だったマリナーズのウェイド・ルブラン投手は「全く問題ない。確かに日米で多少、意味合いは異なるけど、当てられた打者は理解しているよ」と言い切る。「ユウセイは自分のすべての行動が米国の文化において適切かどうかを知ろうとしている。いい心掛けだよ」と話す。

 地元紙「シアトル・タイムズ」のライアン・デビッシュ記者にも意見を聞いてみた。「確かに米国では死球を与えた投手が帽子を取ることはしないけど、相手に向かって自分の胸を手のひらでポンポンとたたく投手はいるよね」。これは名案かもしれない。

 勝負の世界。打者の胸元へ厳しいボールを投げ込まなければいけない時は必ずある。制球を乱して相手にぶつける可能性もある。菊池は同じシーンに出くわした時、マウンド上でどんな行動を取るか、実に興味深い。言語、習慣、文化、そして、メジャーの不文律。新しい世界で菊池が日々、学びながら成長している。(デイリースポーツ・小林信行)

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