【野球】広島カープ実話 ウソのようなホントの話 選手がホストクラブで接客修行 なぜ?
その昔、広島カープで、こんなことがあった。コーチが選手をホストクラブへ連れて行って、女性客を相手に接客業をやらせたという。いったいなぜ?当事者の川端順さん(元広島投手)が当時を懐かしそうに振り返った。
今を遡ること30数年。昭和も終わりに近づいたころの話。カープが東京に遠征したときのことだ。試合後、あるコーチが数人の選手に声をかけた。
「さあ、これから飲みに行くぞ。お前たち、ついてこい!」
指名を受けたのは川端さんと川口和久さん、津田恒美さん、清川栄治さんの4人。全員、投手。そして訪れたのは新宿の有名ホストクラブだった。
ナイトクラブなら分かるが、ホストクラブで何をしろというんじゃ?
首をかしげる4選手にコーチが命じた。
「今から女性のお相手をするんじゃ」
このとき、「いっさい素性を明かしてはならない」と口止めされた。つまりプロ野球選手であることを告げずに、トークでお客さんを楽しませろという。
いつもとは真逆の立場で会話をリードするのだから、これは大変だ。
事前にコーチがクラブの社長に「選手の1日ホスト」を依頼し、了解を得ていた。
その日は遅い時間帯だったため、来店するお客さんはクラブのママたちがほとんど。すでに根回しはされていたが、詳しい事情を知らない選手は必死だった。
お客さんが入って来ると、次々に隣に座って「世間話」をし、何とか場を盛り上げようとしたが、なかなかうまくいかない。
男前の川口さんも清川さんも口をモゴモゴさせ、津田さんはニコニコしているだけ。コーチはその様子を近くのテーブルから眺めていた。
結局、1時間ほど、この“訓練”に耐えた川端さんが、その時の理由をこのように説明した。
「野球がうまくなるには酒を飲んでコミュニケーションをとるのが一番。ムダ話をすることだと。人が歌っているときは静かに聞くのが礼儀だとも。とにかく、こういうことができるようになると、ピッチングがうまくなると言うんですよ。安仁屋さんは。押すとこは押して引くとこは引く。打者心理を読むということにつながるのかなぁ。独特の発想でしたね。しかし、あの時は緊張しました」
それにしても、やることが奇想天外。
広島と言えば流川。流川と言えばお酒。お酒と言えばカープ?
そう言えば「飲みゅニケーション」は安仁屋宗八さんの“十八番”だったような。
この修行がピッチングに生かされたのかどうかは分からないが、広島が投酒王国、いや投手王国と言われていたのは確か。
ともあれ、「1日ホスト」で川端さんが痛切に感じたのは「トークで人を喜ばせるのは俺にはムリ。ホストの人は凄い」だった。
(デイリースポーツ・宮田匡二)
※次回は「門限破りの朝帰りに意外な顛末」