【野球】日本ハム 浸透する新庄イズム 万波が口にした「ミスしたらベンチのせい」の意味

 ちょっと驚いた。16日の中日-日本ハム戦(バンテリンドーム)。トリックプレーを成功させた日本ハム・万波中正外野手が平然と話した。「(失敗しても)ベンチのせいだと思っていきました」-。

 「ベンチのせい」という言葉はこれまで取材現場で何度も聞いたことがある。決まって首脳陣側から出る言葉であり、選手の口から出てくるのはあまり聞いたことがなかった。あるとすれば首脳陣批判的なもので、そんなチームは決まって崩壊寸前だったからだ。

 “フォースボーク”と呼ばれるそのトリックプレー。一塁走者が牽制を誘い、三塁走者が本塁に突入する戦術だ。

 16日は同点の四回2死一、三塁で一走・上川畑が飛び出しかけてストップ。左腕・小笠原は正面にそのシーンを見る。けん制を投げたのだが、その動作に入った瞬間に、背後に位置した三走・万波はもうスタートしていた。バックホームされる間もなく生還。これが決勝点になった。

 昨年の交流戦でも、同じ一、三塁で重盗のサインが出た。慎重になった三走のスタートが遅れ、本塁タッチアウトとなった。新庄監督は「あんなミスをしていたら一生、上に上がっていけない。スタートが遅すぎる」と厳しい言葉を伝えていた。

 新庄監督には一貫したところがある。積極的なプレーによるミスはむしろ歓迎する一方で、緩慢なプレーや、消極的なミスについては常に厳しい。その際には「失敗したらオレのせいなんだから」という言葉を付け加えてきた。

 17日の試合後、新庄監督は目を細めて話していた。「万波君、きのういいコメントしましたね。『ミスしたらベンチのせい』、そうなんです。ベンチのせい、僕のせいなんです。それくらい思い切ったプレーが選手はできるっていうことですよ」。

 交流戦は4連勝フィニッシュで10勝8敗。5年ぶりに勝ち越した。選手が言う「ベンチのせい」という言葉に集約される、2年目の新庄イズムの浸透とチームの成長。借金4、3位とは6ゲーム差で再開するリーグ戦で、どんな戦いを見せてくれるか。(デイリースポーツ・鈴木創太)

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