【スポーツ】高校恩師が明かす高橋藍の強さの秘密「あの子はコピー忍者なんですよ」石川祐希の背中追い上り詰めた代表の主軸

 バレーボールの新リーグ「大同生命SVリーグ」が11日に開幕した。男子で昨年のVリーグを制したサントリーには今季、日本代表でイタリア1部リーグ・セリエAのパドバで活躍した高橋藍(23)が加入。同代表の石川祐希(ペルージャ)の中大時代の指導者で、京都・東山高で高橋を育てた松永理生さん(43)が取材に応じ、強さの秘密を明かした。

 中大で石川という圧倒的な才能に出会ってしまった松永さん。“天才”の基準が上がり、並以上の選手を見ても簡単に驚かなくなっていた。その時に目に留まったのが、高校生の高橋だった。

 線は細いが、どんなプレーでも器用にこなし、特にレシーブは抜群にうまい。体が柔らかく強打の下に潜り込んで、ボールを正確に上げることができた。相手スパイカーの体の向きや、味方のブロックの高さを見て、ボールが飛んでくる方向を瞬時に判断する能力も一級品。当時の日本代表は石川がサーブレシーブを担い、攻撃力を最大限に生かせていなかった。「藍が石川の対角に入ることができたら-」。松永さんの頭の中には、将来2人が一緒にコートに立つ姿が思い浮かんだ。

 原石を磨くために、石川が中大時代に行っていた練習を東山高に落とし込んだ。高橋にはディグ(スパイクレシーブ)、サーブレシーブからバックアタックに入るプレーを徹底的に指導。ただ単純に動きを反復するだけではない。質の高いプレーを要求し、レシーブ後にフェイクを1、2回入れることは当たり前。達成できなければ、走り込みの罰ゲームを科した。

 高校生が大学生のメニューを消化することは、当然きつい。ただ高橋はある日の練習中に、滝のような汗を流しながら聞いてきた。「石川さんはこのメニューをどう練習していたんですか?」。「石川は2メートルのブロックが必ず3枚ついて、点を決めるまで練習を終わらなかったよ。『トスを近くして』と言ってセッターもコントロールして、自分の選択肢を増やしていた」と松永さんが返すと「じゃあ、それ僕もやります」と言ってきた。極度の負けず嫌いだった高橋は“大学生の石川”と張り合い始め、実力はどんどんと磨かれていった。

 才能が開花したのは、高校3年時の春高準決勝。シーズンで唯一黒星を喫していた松本国際(長野)に対して、高橋の強打が止まらなかった。サービスエースを含め、接戦でトスが上がれば必ず決める。守備でも相手スパイクは軽くレシーブした。「点が欲しい時にギアが上がって、勝負強さは石川みたいだった」(松永さん)。高橋の活躍で、東山高は大会を通して1セットも落とさない完全優勝を達成した。

 卒業後には、守備に秀でたアウトサイドヒッターとして日本代表に初招集。松永さんが思い描いた通り、石川の対角としてコートに立ち、東京五輪、パリ五輪と戦い抜いた。“大学生の石川”の背中を追い、張り合い、実力を吸収して代表の主軸に上り詰めた高橋。松永さんは「あの子はコピー忍者なんですよ」と、まな弟子の強さの秘密を表現した。(デイリースポーツ・谷凌弥)

 ◆松永理生(まつなが・りお)1981年10月9日生まれ、京都市出身。東山高、中大を経て04年からパナソニックに入団。05年に日本代表に選出された。07年に豊田合成に移籍し、11年に現役引退。12年から17年まで中大の男子監督を務め、石川、関田誠大らを指導した。東山高のコーチも務め、高橋藍らを育成。20年の春高バレーで初優勝を果たし、22年から監督に就任した。190センチ。

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