星稜野球部・山下名誉監督が語る教え子・本田圭佑 松井の背中を必死で追っていた
デイリースポーツの高校野球評論「美しき球児たち」で健筆をふるう星稜高野球部の山下智茂名誉監督(73)が27日までに、同校出身のサッカー日本代表MF本田圭佑(32)=パチューカ=との思い出を語った。W杯1次リーグ第3戦のポーランド戦(28日・ボルゴグラード)で、2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出をかける「蒼き侍たち」のキーマン。社会科教諭として教べんをふるった教え子は、元巨人、大リーグ・ヤンキースの松井秀喜氏(44)の背中を必死に追っていた。
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最初は私の社会科の授業中だったか、職員室に尋ねてきた時かもしれません。本田が私に聞きました。
「どうすれば松井秀喜さんのようになれますか?」
あんなふうになりたい、松井のようにビッグになりたいと言うのです。
私は「人間性が大事だぞ」と、高校時代の松井に言ったのと同じ話をしました。「考え方をしっかり持て。松井も本をたくさん読んでいたぞ」。ことあるごとにそんな話をし、うちの家に来たこともありました。
G大阪(ジュニア)で上(ユース)に上がれず、悔しい思いをしてうちの高校に来た子です。強い思いがあったのでしょう。「ビッグになりたい」と、言うことは大きかったけど、その努力には誰もが納得していました。
私はいつも早朝6時頃にはグラウンドに出て整備をしていたのですが、本田が朝の練習に来るのも同じような時間でした。今は言葉どおりの活躍に驚いています。
以前、卒業生が私に面白い話を言ってきたことがありました。本田が腕時計を2つしているのは有名ですが、あれは「本田が山下先生のをパクってますよ」と皆で話しているというのです。
2000年に巨人が優勝した時、私は長嶋さんと松井からV記念の腕時計をもらいました。生徒たちにせがまれてそれを授業に持って行き、両腕につけて見せました。「一流」とは何かを教えたかったのです。当時の生徒たちはそれを覚えていて「まねした」と。そんなはずないと思わず笑ってしまいましたが、本田はあの授業を覚えているでしょうか。
彼が欧州に行ったばかりの頃に、学校に帰ってきた姿を見てカミナリを落としたことがあります。「なんだ、その茶髪は!それにジーパンなんて。松井は毎年ネクタイを締めて帰ってきていたぞ」。その時、本田は「先生、すみません。でも欧州で日本人がなめられないためには、格好も大切なんです」と言っていました。サッカーは相手と体もぶつかるし、野球とはちょっと違うのか、あいつも戦ってるんだなと思いました。
それでも、教え子にはきちんとした格好で帰ってきてもらいたい。だから私も引きません。「わかった。でも、学校に来る時には髪は黒くしろ。オレは人間的にはお前が好きだ。でも、お前の服装は嫌いなんだ」。そう言ってはみましたが、あいつは笑っていましたね。