福塩線に昼が来た~ッ!カープ党の主人が作る絶品“駅オコ”
“食べ鉄”の秋-。列車の旅はとかく腹が減るもの。駅弁もいいが、駅舎で食べる“エキメシ”も捨てがたい。福塩線に無人駅を再活用したアジな駅があると聞いた鉄っ子記者が腹を空かして行って来ましたぁ~ッ。
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福山から電車と気動車を乗り継ぎ2時間12分。山里にぽつんとたたずむ甲奴(こうぬ)駅に降り立ちました。この甲奴駅、駅舎の約半分がお好み焼き屋さん「美里歩」(おりーぶ)になってるんです。駅そばならぬ“駅オコ”ですな。
「よう来んさったなあ」と笑顔で迎えてくれたのは主人の奥田弘士さん(74)。駅近くに夫婦で喫茶店を営んでいた奥田さんに、駅舎の再活用の話が来たのは今から約18年前。「若い頃、駅で(SLの)石炭を運ぶアルバイトをようやりよったけえ」と、愛着もあったことから話を引き受けたそうです。以来、喫茶店を奥さんが、この「美里歩」を奥田さんが“夫婦二刀流”で切り盛りしてるんですって。
開店以来、磨きに磨いて銀色に輝く鉄板に、自慢のお好み焼きを広げていく奥田さん。そばの上にキャベツをたっぷりのせる“広島風”です。そばが2玉入るすんごいボリューム。これが並の大きさで650円。絶対に安い!ソースはこだわりの「カープソース」。ピリッとした辛口が生ビールとの相性バッチリ!
他にも国産牛の新鮮なホルモンを使った「ホルモン野菜焼き」(700円)も人気。夜は22時まで営業しているので、居酒屋メニューも充実してます。
もうひとつの自慢は自家製のお米。一町もある奥田さんの田んぼで取れた地元米「あきひかり」を提供。粒は小さいけど甘みが強いんですって。普段は列車で来るお客はあまりいないけど、夏休みや「青春18きっぷ」のシーズンになると遠くから訪れる人も多いそうです。
広島とあって奥田さんも根っからのカープファン。古葉監督時代の“黄金期”にはよく広島市民球場へ出かけたそうです。昨年の日本シリーズの時には、駅前に大型テレビを設置して住民と“パブリックビューイング”を行って大いに盛り上がったとか。今年もカープが日本シリーズに進出すれば、いろいろと催し物を検討中だそうですよ。
鉄ちゃんだけでなく、カープ党もぜひ訪れてみたいお好み焼き屋さん。ごちそうさまでしたッ。
1日の乗降客は十数人程度。8時50分の列車が出れば、7時間近くも次の列車は来ない。こんな無人駅に、30年以上続く名物うどんがある。
関西風のツユの上に、地元のきび(白)、よもぎ(緑)、梅(赤)を練り込んだ3色の丸餅がのる見た目も鮮やかな「福円阡(せん)うどん」。店主の里武三さん(66)が福塩線にちなんで名付けた。
値段も開店当時から変わらぬ555円。“二重にご縁がありますように”と、駅名が焼き印された特製のお守り(25円)をつければ580円。訪れる多くの人が注文していく。
駅の構内には“福縁の神様”として布袋様がまつられていたり、楽しい飾り付けがいっぱいで長い待ち時間でもあきることはない。
「ここは色んな人が集まってきて笑顔になる『夢人駅』なんですよ」と里さんは笑う。
83年に無人化されて以来、業務委託時代も含めて三十数年間、備後矢野駅を守ってきた。列車だけでなく、オートバイや自転車で訪れる人も。また地域の人々の語らいの場にもなっている。
そんな備後矢野駅に5月から頼もしい“助っ人”が加わった。サンド・アーティストの三木英夫さん(69)だ。縁あって兵庫県から移り住み、創作活動のかたわら、「駅守り」として店の切り盛りもしている。
時間をかけて行くからこそ価値のある「福円阡うどん」。やわらかな餅と人々の優しさも染みたうどんに身も心もほっこりに。ごちそうさまでした。
◆福塩線
・区間 福山~塩町の78・0キロ(ただし府中からの全列車が三次まで乗り入れ)神辺で井原鉄道、三次で芸備線に接続
・電化と非電化 福山~府中までは電車(通称:福塩南線)、府中~三次は気動車(同:福塩北線)
・使用車両 105系・115系(福山~府中)、キハ120形(府中~三次)