南国・高知のロマン列車 眺望抜群の〝特別運転〟 JR四国「ものがたり列車」第三弾の魅力とは

 坂本龍馬ら多くの幕末の志士たちを生んだ南国・高知に、雄大なロマンを感じさせる観光列車がある。「志国土佐 時代(とき)の夜明けのものがたり」だ。JR四国「ものがたり列車」の第三弾で、期間限定で土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」を走る〝特別便〟にオッサン鉄ちゃん記者が乗り込んだ。

 JR四国には観光列車として3つの「ものがたり列車」がある。松山~伊予大洲・八幡浜を走る「伊予灘ものがたり」、多度津~大歩危を走る「四国千年まんなかものがたり」、そして「志国土佐 時代(とき)の夜明けのものがたり」だ。2020年7月に走り始めたこの列車、通常は高知~窪川の運転だが、期間限定で土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」を走る。そんな〝特別運転〟に乗り込むチャンスを得た。

 車両は他のものがたり列車と同じく国鉄時代の名車・キハ185系特急型気動車を改造した2両編成。デザインも同じくJR四国の社員でもある松岡哲也氏が担当している。重厚な茶色をまとった1号車「KUROFUNE」は幕末の蒸気船「黒船」を、目に映える真っ白な2号車「SORAFUNE」はレトロSF小説で描かれる空想上の宇宙船をイメージしているという。壁面には坂本龍馬も大きくプリントされている。車両番号も1号車が「キロ185 1867」2号車が「キロ185 1868」と幕末・明治維新を象徴する年号を取り入れているところも、鉄ちゃんのみならず歴史マニアの心をくすぐるニクイ演出だ。

 記者が乗車したのは2号車の「SORAFUNE」。白を基調とする革張りの車内、オシャレな照明支柱など斬新なデザインだ。小さいモニターがいくつも設置され、運転席カメラからの前面展望も楽しむことができる。

 奈半利(なはり)から高知にむかう「雄飛の抄」。発車して間もなく眼前いっぱいに土佐湾が広がってきた。「ごめん・なはり線」は高架部分が多いため眺望が抜群に良いことで有名だ。座席も窓側に向かって配置されており、気動車ならではのディーゼルエンジン音が車両の下から響いて太平洋をクルージングしている気分になってくる。以前「伊予灘ものがたり」で見た瀬戸内海は穏やかだったが、この列車から眺める太平洋は海の色も濃く男らしい。この日はあいにくの曇天。「晴れていたら土佐湾に沈みゆく夕陽のコントラストをお楽しみいただけるのですが…」と女性アテンダントさんが残念そうな笑顔で話してくれた。それでも龍馬と並ぶ土佐出身の幕末の志士・中岡慎太郎や、三菱の創設者・岩﨑弥太郎ゆかりの東高知を走ることもあり、列車に乗りながら歴史のロマンを感じることができた。

 列車の旅での楽しみはやはり食事。女性アテンダントさんが重厚な木箱の容器をセッティングしてくれた。開けてみると見た目も鮮やかな「浜スイーツ&ティ-セット」。海洋深層水塩を使用したスコーンや、室戸産の備長炭を使用して作ったサンドイッチなど地元の食材がふんだんに取り込まれている。特に炭パンのサンドイッチはインパクト抜群。具材の鰹のゆで節との相性もバッチリ。弘法大師・空海が広めたとされる「きしまめ茶」も香ばしく、雄大な景色とほっこりさせてくれる食事に目も舌も大満足だ。

 地元沿線のPRも抜かりはない。阪神タイガースのキャンプ地でも有名な安芸では、駅に併設された「ぢばさん市場」で地元の特産品が購入でき、夜須では「道の駅やす」や海岸近くまで直接散策することができる。何よりも心に染みるのが四国のものがたり列車に共通する「地元の人々のおもてなし」だ。線路沿いの道路を自転車で列車と一緒に並走したり、夜須駅では少年が大漁旗を力一杯振りかざす。列車が後免(ごめん)駅に近づく直前に通過する幼稚園からは、たくさんの園児たちがかわいい手を振ってくれた。

 雄大な太平洋、地元食材をふんだんに使った料理、心を尽くした沿線の人々のおもてなし。心身ともに癒やされ、「明日からまた頑張ろう!」と元気をもらった2時間40分の列車の旅。げにまっことええ所じゃき、是非来とーせ!

★「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」(ごめん・なはり線)

・運転日 12月20日までの毎週金曜日

・運行区間 高知~奈半利 1往復(高知→奈半利「煌海の抄」、奈半利→高知「雄飛の抄」)

・車両 キロ185系気動車2両編成(全席グリーン車指定席)

・料金 高知~奈半利 5130円(運賃、特急料金、グリーン料金含む)

・食事 切符の購入時に事前予約が必要。車内でも飲み物や特産グッズを販売

※通常は土日祝日に高知~窪川間を運転

※高知へは岡山から特急「南風」で約2時間30分

・問い合わせ JR四国電話案内センター☎0570・00・4592、または「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」でネット検索

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