「大歩危・小歩危」に沿って走る観光列車 ~JR四国「四国まんなか千年ものがたり」~

 四国の真ん中を縦断するJR土讃線。善通寺や金刀比羅宮、吉野川の雄大な景勝地「大歩危・小歩危」に沿って走る観光列車がある。「四国まんなか千年ものがたり」は鮮やかな色使いの外観と美味しい食事が評判で、インバウンドで訪れる外国人観光客にも人気があるという。「国鉄型」と食べることが大好きなオッサン記者が人気列車の魅力に迫った。

 日本三大秘境の一つ、祖谷峡の玄関口・大歩危駅に、色鮮やかに彩られた3両編成の列車が発車を待ち構えていた。1号車から3号車にかけ新緑の緑~渓谷の青・雪の白~紅葉の赤とあでやかに変わる色使いが高級感を演出している。最後の国鉄型気動車キハ185系の原型をよくとどめているため、鉄道ファンからも人気が高い。

 2017年4月から走り始めた「四国まんなか千年ものがたり」。テーマは「おとなの遊山」。「遊山」とは昔、沿線の子ども達が桃の節句の時期などに、弁当を持って野山に行く風習のこと。その遊山を列車の旅としてアレンジされたのがこの列車だ。

 車内は古民家をイメージして、徳島県産の杉材を多様とした温もりが特徴。1号車「春萌(はるあかり)の章」では新緑をイメージした緑色の座席、3号車の「秋彩(あきみのり)の章」は紅葉と熟れた果実をイメージした紅色の座席が印象的で、まるで走るレストランカフェ。2号車の「夏清(なつすがし)の章・冬清(ふゆすがし)の章」は長さ7メートルのベンチソファーで家族やグループ連れに人気だという。

 今回乗車したのは上りの「しあわせの郷紀行」。女性アテンダントが鳴らす「発車の鐘」と同時に大歩危駅を滑り出した。すぐ眼前に「大歩危・小歩危」の秘境が広がる。〝四国三郎〟吉野川の水面はあざやかなラムネ色。鉄橋を渡る際には速度を落としてゆっくり通過する。景色に見とれているうちに料理が運ばれてきた。少しコンパクトだが重厚な木箱を開けると三段重のお弁当箱が。地元の日本料理「味匠藤本」が地元食材にこだわった料理やスイーツが満載。彦摩呂じゃなくても「徳島食材の宝石箱や~」と感動してしまう。味付けも優しく野菜もふんだん。特に女性には大人気だろう。

 走行区間はトンネルが多く、車内の証明にも工夫がこらされている。間接照明でやや薄暗くし、天井には日本の古民家の囲炉裏をモチーフとした飾りつけがされており、どこか懐かしい雰囲気をかもしだしている。

 予讃線を走る「伊予灘ものがたり」とともに、沿線住民のもてなしも心が和む。約15分間停車する阿波川口駅では「タヌキ駅長」がお出迎え。タヌキのカチューシャを付けた地元のご婦人方が物産販売するなどにぎやかだ。

 列車は坪尻に到着した。駅舎の周囲は森だらけ。列車か徒歩でしか行けない日本有数の秘境駅でちょっとした探検気分も味わえる。坪尻では勾配を緩やかに上るためのスイッチバックが見ものだ。列車はバックしながら本線を渡って引き込み線に入り停車。運転士が最後尾から車内を通って最前部に移動して方向転換。再び本線に戻って多度津方面に向かう。

 特急「南風」なら1時間ちょっとで走り抜ける距離を「四国まんなか千年ものがたり」は約3時間かけてゆっくり走る。落ち着いた車内、四季折々の車窓、特別な料理。これで1万円ちょっとと、リーズナブルな料金設定もうれしい。

 「四国まんなか千年ものがたり」「伊予灘ものがたり」「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」の『ものがたり三兄弟』をデザインしたJR四国・鉄道事業本部営業部・ものがたり列車推進室長の松岡哲也さんは「誰もが気軽に楽しめる列車にしたかった。いつもよりちょっとオシャレな気分で列車の旅を楽しんで頂ければ」と語っていた。

 秋から冬へ、冬からやがて春へ。四国の四季を感じる列車に乗って、あなたも「おとなの遊山」にでかけてみてはいかが?

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