歴史を訪ねながら「暮らすように旅する」 岡山・吹屋ふるさと村

 レトロタウンで有名な岡山県高梁(たかはし)市の「吹屋ふるさと村」に行ってきた。9月に「暮らすように旅する」をコンセプトに古民家を改造した宿泊施設「町家ステイ吹屋千枚」がオープン。村長の戸田誠さんのガイドで、江戸時代から明治時代にかけて鉱山の町として栄えた吹屋を巡った。

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 国の重要伝統的建造物群保存地区の「吹屋ふるさと村」入り口にある駐車場で案内役の戸田さんと待ち合わせをした。最初に案内してくれたのは、待ち合わせ場所から約4キロ離れた「広兼邸」だ。

 銅山とベンガラの原料であるローハ製造で巨大な富を得て江戸時代後期に建てられた屋敷は、岩山を削って石垣を積み上げた城郭を思わせる大豪邸。映画「八つ墓村」のロケ地にもなっており、今もマニアが訪れるという。戸田さんは「ここの向かいに個人で建てた神社があります。そこから写真を撮ると、山とこの家しか入らない絶景です。秋には紅葉も見事ですよ」と説明してくれた。

 広兼邸の次は「笹畝坑道」へ。江戸時代から大正時代まで採掘されていたという。整備された坑内はライトアップされ、人形を配置し当時の採掘する様子が再現されている。ここでは黄銅鉱とともにベンガラの原材料となる硫化鉄鉱が採掘されていた。

 原材料の採掘場を見学した後は、ベンガラ工場を復元した「ベンガラ館」へ。国内随一のベンガラの産地として栄えた吹屋の象徴でもある。吹屋で生まれ育った戸田さんは「子供の頃は工場の近くを通るのが怖かった。草木がまったく生えていないんですから」と、硫化鉄を焼くことで排出される亜硫酸ガスによって自然を破壊する怖さを教えてくれた。

 ベンガラの歴史を学んでから、赤銅色の石州瓦とベンガラ色の外観で統一された町並みへ。まずは、ベンガラ型染めができる「吹屋案内所」を訪れた。ここではトートバッグやハンカチなどに自分の好きなデザインでベンガラを使った型染めができる。加えて、鉄道のデザイナーとして有名な岡山市出身の水戸岡鋭治氏が手がけた内装も見逃せない。

 ベンガラで栄えた商家の町並みを散策しているとボンネットバスにも出合うことがあり、レトロな雰囲気を味わうことができる。町並みを進んでいくと、9月にオープンしたばかりの宿泊施設「町家ステイ吹屋千枚」がある。空き家となった古民家を改造したもので、戸田さんは「吹屋の家の特徴は客間の天井が高いんです。室内には古いものを地元の人から借りて飾っています。『暮らすように旅する』がコンセプトです。わが家的感覚で泊まってほしい」と熱く語った。

 1日1組限定の1棟貸し切りのスタイル。寝室は3部屋あり2人から7人が宿泊できる。併設しているカフェでは地元の食材を生かしたこだわりの朝食も用意している。

 山道の先に突然現れる町並みに圧倒された「吹屋ふるさと村」。歴史を学ぶとともに、紅葉シーズンには絶景も楽しむことができる。一度、訪れてみてはいかがだろう。

 ◆アクセス 山陽道・笠岡ICを降りて国道313号から県道300号で約2時間40分。または、中国道・新見ICを降りて県道33号から85号で約2時間30分。

 ◆町家ステイ吹屋千枚 問い合わせはTEL0866・29・3050(9~17時)。観光全般については高梁市成羽町観光協会吹屋支部(TEL0866・29・2222)へ。

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