高知・丸山、引退撤回し走り続けた1年-すべてをやり切り高知を去る
【高知・丸山雄大投手】文=高田博史
昨シーズン終了後、丸山雄大は現役を終えるつもりでいた。だが、心に引っ掛かっているものがある。
「やっぱり優勝したいなっていう気持ちがあって。親とも相談して、もう1年やらせてもらうことになったんです。だから、去年の時点で『もう1年』って決めてました」
千葉で暮らす両親が「NPBに行こうが行くまいが、どこまでも応援する」と言ってくれた。そして臨んだ2018年、NPBを目指すことは言うまでもなく、これまで以上に優勝を目指して投げ続けた1年となる。
先頭打者を出さない、ボール球を使うとき甘くならないようにするなど、マウンドで考えていたことはいくつもある。なかでも意識していたのは、打者の狙っていない球を投げることだった。「次はさすがにストレートが来るだろう」と思わせて、また変化球を続ける。いかに相手の逆を突くかを常に考えていた。
「2年目(昨年)までは、ただ勝ちたい、結果を残したい、だけだったんですけど。やっぱ3年目、今年は優勝したかったので。多少、悪いピッチングでも『なんとか粘って後ろにつないで、なんとか勝ちを!』っていう意識に変わってました」
粘りの投球は数字に表れる。防御率は昨年の4・23から2・87と大きく改善した。持ち味である与四球率の低さは0・97と、2年連続リーグ1位の成績である。
しかし、後期も優勝の可能性が消え、対愛媛後期8回戦(9月17日、坊っちゃん)が最後のマウンドとなる。六回裏に登板し、1イニングを無失点に抑えた。これで終わったんだという実感は、まったくなかった。
「何日かしてからですね。オフが終わって、チームの練習が始まって。自分は野球に携わってないっていうのを感じて。ああ、なんか終わっちゃったんだなって」
高知に来て得たものは、人とのつながりだと話す。チームメート、他球団の選手、ファン。多くの人たちと知り合えたことは財産だ。
「また高知にも来たいなって思うようになりました」
挑戦することと、野球をあきらめること。その両方をやり切り、いまはすっきりとした気持ちでいる。