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V25狙う白鵬、覚醒の瞬間は黒星

2013年5月3日

 本紙インタビューに答える白鵬(撮影・田村亮介)

 本紙インタビューに答える白鵬(撮影・田村亮介)

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 このころ白鵬には大きな目標があった。それは双葉山が得意とした取り口「後の先」の体得。相手に好きなように攻めさせておきながら最後は自分の型に持ち込んで勝つという、いわゆる横綱相撲を自分の理想として掲げていたのだった。それがこの稀勢の里戦で破たんした。そのショックは言葉では表せないほど大きいものだった。

 「あの稀勢の里との一番は、自分の相撲を取ったつもりではありましたけど、勝負の厳しさでしょう、一瞬で展開が変わった。自分の目指す取り口は後の先ですから、勝つ相撲は取らない。それなのにあの時は慌てて勝ちにいったんですね」

 双葉山は39年1月場所4日目に安藝ノ海に敗れて連勝が69で止まると「われいまだ木鶏(もっけい)たりえず」と知人に電報を送った。木で作った鶏のように無心の境地に至れなかった自分を戒め、さらなる精進を誓った言葉だったが、白鵬もその言葉に勇気をもらった。連勝ストップを真正面から受けとめ、翌日にはもう前を向いた。

 「次の朝、自分を奮い立たせて朝稽古に励みました。やっぱり勝ち負けというより、大事なことは常に精進努力していくっていうことでね。結局その場所優勝できましたけど、負けて土俵に上がる気持ちがさらに強くなった。相撲を取る喜びっていうのかな」

 それからの白鵬は相撲に格段の余裕が感じられるようになった。勝ちにいかない。勝つ相撲を取らない。だが、結果的には白鵬の型になって白星を重ねていく。優勝回数は順調に増え、3月の春場所で北の湖に並ぶ歴代4位の24度を積み重ねた。上にいるのは25回の朝青龍、31回の千代の富士、そして最多32回の大鵬だけだ。

 「今は双葉山関が目指した後の先の気持ちが分かる。決して勝負を焦らないっていうね。言葉は悪いけど、相手をなめるんですよ。余裕を持って相手に相撲を取らせながら最後は勝ちにいく。双葉山関は69連勝、私は69代横綱でね。こういう縁がありますから。残りの相撲人生、この縁だけで頑張っていこうかなと思っています」

 連勝が63で止まった日、砂かぶりで尻もちをつきながら見たものは、双葉山の真実。白鵬は敗れたからこそ、さらなる強さを身につけ、平成の大横綱へと駆け上がっていったのだった。=敬称略=

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