武芸百般の整理記者魂
時間と戦いドラマを伝える
報道部記者、またはカメラマンにとって直接 "戦う相手"が取材対象とするなら、整理部記者にとって"戦う相手"は読者といえる。
毎日、原稿や写真が次から次へ編集局に送信されてくる。それに対し「この記事は短いけど、おもしろいから凝った見出しにして、イラストも使って派手に見せよう」とか「このグラビアアイドルの写真はセクシーだから、大きくしてお父さんの読者に満足してもらおう」と目を引くようなレイアウトにする。逆に「この原稿長いけどおもしろくないなぁ」という場合は行数を短くしてもらって小さな扱いにしたり「この写真イマイチだなぁ」という時はほかの写真を写真部に発注したりする。
限られた時間でニュースの価値判断をし、読者が読みたいものは何か?どれの扱いを大きくすれば喜んでもらえるか?読者のことを最優先に考え、新聞という商品を作り上げる。それが整理部記者の仕事であり醍醐味だ。阪神が勝てば一面の題字が「虎のしっぽ」になるのも、読者に楽しんでもらおうという発想から誕生したものだ。
もちろん、ひとりよがりになってはいけない。自分のアンテナを高く張っておく必要がある。阪神、その他プロ野球、サッカー、格闘技、芸能、社会、競馬 …など担当する分野は多い。新聞やテレビ、雑誌、インターネットなどで情報をインプットする作業は欠かせない。お笑い芸人の持ちギャグがスッと出てこないようでは整理部記者失格だ。
スピードも要求される。プロ野球のナイターを担当する場合、原稿が届くのは降版時間(完成した紙面を印刷所に送信する締め切り時間)の直前になる。原稿を読んで見出しをつけるなんて悠長なことは言ってられない。テレビで試合を見ながら、見出しを考え、レイアウトする。降版時間直前、あちこちでテンパッた声や怒号が飛ぶ中、到着した原稿を突っ込んで完成させ印刷所に紙面を送る。
降版時間に対する強迫観念のおかげで、整理部記者が必ず見る夢がある。降版時間10分前、パソコンの画面を見るとなぜか真っ白。絶対、無理なのに必死に面を組もうとする。おまけに、なぜか誰も手伝ってくれない。もう、アカン−。焦りが極限に達した時、ハッと目覚める。
ある先輩社員は、同じような夢を見て会社から逃げたというから恐れ入る。実際、ここまでエグいことはないが、それでも仕事を終えた後の解放感は想像以上のものがある。そのまま深夜の街へ出て行って朝まで飲むこともあれば、家で録画しておいたお笑い番組を朝まで見ることも。仕事でたまったストレスを翌日まで引きずらない。これも整理部記者に求められる大事な "仕事"の一つだ。
【2003年4月入社・大阪本社編集局整理部配属】 |