能楽と花火の“強弱”に見る日本の精神
「ニッポン愛&Sarah、s eye=第14回」
7月4日はアメリカ合衆国の独立記念日です。その米国で生まれ育った私ですが、日本の伝統文化にとても興味があります。アメリカはまだ若い国で歴史がないですので。私は戦国時代のお城が大好きだったりするんですけど、その時代、まだ米国はなかったわけですからね。
今、私は日本で日本のことを考えています。例えば少子高齢化について。東京に住んでいると、若者の人口が減っていると聞いても実感が湧かないです。渋谷のど真ん中に立っていたら「減ってるわけないでしょ!」って思いますけど、学生時代に島根県の山奥に住んだことがあり、田舎にはお年寄りが多くて若者が少ないと感じました。都会から離れた生活をしないと実感できないと思います。
これからの日本では、お年寄りと若者のバランスが崩れて差が広がっていくのは事実なので、対処方法をどうしていくか。米国人の私がなぜそこまで気になるのかというと、日本の伝統文化を学んだことが背景にあるからかもしれません。
日本の大学に留学していた頃、能楽の授業を受けたんです。息の使い方や訓練における西洋演劇との違いとか、同じ役者として見たら興味深くて。武術の先生によると、能楽の歩法は「新陰流」(剣術の流派)から生まれたということなんですが、能楽の先生に聞くと「逆です」と。どちらが先か分からないのですけど、つながっていることは確かで、そういう歴史を感じることが好きなんです。
また、能楽と華道のつながりを知るために自分で生け花をして、そのバランスを見たり。授業の中で、世阿弥の本を読み、「華がある」という言葉を学びました。演劇を見ていると、そういう存在感の塊みたいな役者さんがいるんですね。うまい役者は数え切れないほどいますが、「華がある」はまた違う。「そういうことなのか」って初めて気づいたんです。能や歌舞伎が日本の芸術すべてにつながっている、一つの筋が通っていると実感できました。
能楽では声の使い方にメリハリがあって、1拍だけ静寂があるんですね。「よぉ~」って。その一瞬が花火大会にもあったりします。バーンって爆発した後にシュッと。ひたすらバンバンバンだけじゃ飽きますけど、その後のシュッがいい。その精神が日本には浸透しているんですね。梅雨が明けると花火の季節を迎えます。そんなことを思いながら見てみると面白いですよ。
◆サラ・マクドナルド(Sarah Macdonald)1990年8月12日、米マサチューセッツ州生まれの26歳。14年にNHK連続テレビ小説「花子とアン」でデビュー。女優としてドラマや舞台のほか、情報番組などでも活躍中。
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