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「柔道全日本選手権」(29日、日本武道館)
日本柔道界を支えてきた鈴木桂治(31)=国士舘大教=が絶体絶命の窮地に陥った。鈴木はロンドン五輪男子100キロ超級の代表選考会となる大一番の準決勝で石井竜太(24)=日本中央競馬会=に内またで投げられた際に右肩を脱臼。一本負けで大会連覇を逃すとともに、最終選考会となる選抜体重別選手権(5月12‐13日・福岡)の出場に赤信号がともり、3大会連続の五輪出場が絶望的になった。6月で32歳となるベテランだけに今後の状況次第で“引退”の2文字が浮上する。
開始17秒、193センチ、135キロの巨漢・石井に内またで豪快に投げられた瞬間、右手をついた鈴木の顔がゆがんだ。苦悶(くもん)の表情で立ち上がった鈴木はその時、右手首を押さえていた。相手の石井も「手首を痛めた?」と感じたという。内または『技あり』。石井のポイントとなり、試合は続行。そこで初めて、観客は鈴木に何が起きたのかを知ることになる。
右腕が上がらない。ダラリとぶら下がったまま、鈴木は“丹下左膳”のごとく、左腕1本で戦った。誰が見ても重傷だった。これがボクシングや総合格闘技ならば“レフェリーストップ”となるところだが、柔(やわら)の精神では最後まで戦い抜かねばならない。
その後も石井に体を揺さぶられ、バランスを崩して倒れるたびに、鈴木の顔は激痛にゆがんだ。既に戦闘不能。もう勝負は付いていた。それでも戦う。それが柔道だ。鈴木は右肩を抱いて立ち上がっても、痛みで相対するのに時間がかかり、そのたびに『指導』をもらった。『指導』が3回繰り返された時点で、先の『技あり』と合わせて鈴木の一本負けとなった。
鈴木は都内の病院に直行。『右肩鎖(けんさ)関節脱臼』と診断された。試合直後、控室で鈴木と対面した関係者は「肩は真っ赤に腫れあがり、本人は触られるのを拒否した」と明かす。全治期間は不明だが、脱臼は回復まで3〜4週間を要する。中12日での福岡は日程的に厳しい。
鈴木は「こんな形で全日本柔道選手権大会が終わってしまい、申し訳ない気持ちです」とコメント。男子代表の篠原信一監督は「桂治は投げられてケガをした。投げられなかったらケガをしていなかった。そこですよ」と内容的に完敗だった鈴木の限界を指摘した。
北京五輪で敗退後、引退説を吹き飛ばして現役続行を表明。昨年の同大会で復活Vを遂げた“不死鳥”といえども、ロンドン五輪をこの逆境で逃せば、再び“引退”の2文字と直面することになる。
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