アメリカ映画に教わった演技
「スクール☆ウォーズ」の撮影中は、ロバート・デ・ニーロやアル・パチーノの映画を見てくると、彼らが師事したリー・ストラスバーグの本を、生徒役の俳優さんたちに渡して勉強させました。
演技する時に自分が演じているものって、フィクションじゃないですか。それを自分の人生とうまくオーバーラップさせながら役作りしていくっていうのが、ストラスバーグが主宰したアクターズ・スタジオのメソッド演技法=感情や行動を呼び起こし、自然でリアルな演技を行う訓練法および演技法。ロシアの俳優、演出家コンスタンチン・スタニスラフスキーによるシステムを基にしている=です。
メソッド演技法の訓練である「五感(視覚、嗅覚、触覚、味覚、聴覚)の記憶」っていうのは、例えばその時の相手の顔(視覚)やコーヒーの匂い(嗅覚)などを思い出すことによって自分の感情を思い起こさせる、記憶の演技法なんです。
例えば、夏に日光浴しているシーンを冬に演じる場合、五感の記憶によって夏の太陽を感じたら、実際には冬なのに汗が出てきたというような。自分ではフィクションってわかってるわけじゃないですか。それを、どれだけ自分で自分をだますかっていう言い方は変だけど、どれだけ自分を錯覚させるかが演技だと思うんですよね。
演技の難しさって、リアクションなんですよ。パッと言われて「おっ」と振り向いた時の顔が、初めて聞いた顔じゃないといけないわけです。自分ではどうなるか全部、知ってるじゃないですか。それでも、見ている人を説得しないといけないから。
セリフを言って説明する分には、そんなに難しくないと思うんですよ。セリフが語ってくれるんで。振り向いた時とか、ちょっとしたリアクション、そういう細かい演技を、やっぱりアメリカ映画では教えてくれているような気がして。
それで一生懸命、本を買ってきて「これ、リー・ストラスバーグの、アクターズ・スタジオの本」って渡して「ちょっと勉強しろ」って。森田光男(宮田恭男さん)とかみんな、読んだと思いますよ。(この項終わり)