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「ももクロ」国立進出の背景は他流試合

2014年3月20日

国立進出の3年前、武藤敬司(右)からプロレスの神髄を学んだ「ももクロ」の5人(撮影・北村泰介)

国立進出の3年前、武藤敬司(右)からプロレスの神髄を学んだ「ももクロ」の5人(撮影・北村泰介)

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 といった具合に、その日のイベントは彼女たちの“その後”に生かされ、武藤が掲げる「点を線にする」を体現していく。ももクロの仕掛け人であるチーフマネジャーの川上アキラ氏は筋金入りの“プロレス者”。ステージ演出の佐々木敦規氏は格闘技界でも活躍するディレクターで、K-1のあおり映像を作っていた。11年12月に初進出したさいたまスーパーアリーナ大会の演出(特にオープニング)は、同会場を聖地とした総合格闘技イベント「PRIDE」をほうふつとさせた。ももクロとプロレス&格闘技の親和性は、彼らブレーンによるところが大きいが、他流試合はそれだけにとどまらない。

 『落語』では東京の定席である上野・鈴本演芸場で林家しん平と高座に上がった。『フォーク』では南こうせつと「神田川」や「あの素晴らしい愛をもう一度」を合唱。『昭和歌謡』ではザ・ワイルドワンズや、「NHKのど自慢」「スター誕生!」で知られるアコーディオン奏者の故横森良造さんと共演し、『ザ・ドリフターズ』では加藤茶とコントを演じた。『ヘビメタ』ではブラックサバス(1969年結成の英ロックバンド)にオマージュをささげた曲「黒い週末」を引っ提げて「オズフェスト」(ヘビメタの祭典)に出演。昭和52年(77年)のヒット曲「愛のメモリー」の替え歌でビッグイベントを告知する松崎しげるは常連になっている。ももクロは若いファン層にとって“温故知新の伝道者”であり、親世代のファンにはノスタルジーをかき立てさせる子供たちだ。

 90年代生まれのメンバーは、はるか昔に活躍した“知らない人”を相手にしながらも“やらされている感”がない。逆に自分流に飲み込んでしまう。その部分で、今は亡き、「週刊ファイト」の“I編集長”こと井上義啓氏が残した「プロレスは底が丸見えの底なし沼」という名フレーズを思い出す。プロレスの4文字を、ももクロに置き換えてみると、公園の路上や家電量販店での無料ライブで歌い始めてわずか5年10か月、史上最速で国立競技場での単独公演を実現した要因の一つがおぼろげに見えてくる。

 見た目のキャラクターは分かりやすい(=底が丸見え)。だが、分からない。なぜ、ここまで熱狂的に支持されるのかと問われると、“モノノフ(この言葉も田中将大投手によって世間に浸透した)”でない大人たちは言葉に窮する。「全力投球」「アクロバティック」「結束力」「口パクなし」「サブカルチャーから大御所まで多彩な作家陣による個性的な楽曲」といった周知の要素だけでは説明しきれない“サムシング・エルス(何か)”があり、それは何でも飲み込んでしまう“底なし沼”のようでもある。ももクロは底が丸見えの底なし沼‐。

 最後に後日談を一つ。ももクロが武藤と共演した「試練の七番勝負」の第2弾が12年1月末から2月初めに開催され、あの梶原一騎氏の実弟で、作家、空手家の真樹日佐夫氏も出演予定だった。取材で事務所に出入りさせていただいていたのだが、11年の暮れ、真樹氏から「おい、ももクロって知ってるか?今度、一緒にイベントに出るんだよ。ももクロ、何人いるんだ?」と聞かされた時は、驚きと同時に“ももクロvs昭和のステゴロ”という異種格闘技戦に期待が膨らんだことを覚えている。だが、年が明けた1月2日、真樹氏は急逝され、世代を越えた「究極の他流試合」は幻に終わった。そんな記憶が今回の「国立」からよみがえったという次第。ちなみに、テーマは「ケンカ」だった。=一部敬称略=

(デイリースポーツ・北村泰介)

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