「Ｊ１、Ｃ大阪１‐１浦和」（３０日、長居）

　ドイツ１部ニュルンベルクに移籍するＣ大阪の日本代表ＭＦ清武弘嗣（２２）は、国内最後の試合を１‐１で引き分けた。浦和をホームに迎え先発した清武は、ノーゴールで後半３６分に交代。試合後の壮行セレモニーでは、家族やサポーターに感謝の言葉を並べた。来季からマンチェスター・ユナイテッドに加入する元チームメートのＭＦ香川真司（２３）も激励に駆けつけた。

　Ｃ大阪最終戦後半途中交代　劇的な同点弾が決まると、顔をくしゃくしゃにしてベンチを飛び出した。殊勲の同級生ＭＦ柿谷と抱擁。笑顔を絶やさず終了のホイッスルを迎えたが、感極まった。試合後、ずぶぬれになった背番号８のユニホームを脱いだ。梅雨空と３万６７２３人観衆に見送られ、清武がＣ大阪に別れを告げた。

　「ずっとガチガチで…。久々に緊張した」。試合後のセレモニーで敬愛するＣ大阪ＯＢの香川と森島寛晃氏から花束を贈られ、真梨子夫人、長男・真俊君と抱き合うと、ようやくこわばった顔がほぐれた。２人の背番号８を超えようと、もがいた２年半。後半３６分に交代を命じられたが、本意ではない。２年前の香川がそうであったように惜別弾でラストを飾りたかった。

　ニュルンベルク移籍会見で「真司君ができるなら、僕もできる」と自信をのぞかせた。１０年にドルトムントへ移籍した香川は初年度に８ゴールを挙げ、今季も１３得点。チームを２冠へ導いた先駆者の偉大さは認識する。

　自身２２回目の誕生日から１週間後の昨年１１月１９日。新スパイクの型どりのため、大阪・梅田のサッカー専門店を訪問。ショップに飾られたドルトムント背番号２３のユニホームを見つけると、女性スタッフに写真撮影を依頼し「自分もこんなふうに、ユニホームを飾られる選手になりたい」とつぶやいた。

　この日、満員の客席には背番号８の人文字が躍った。森島、香川、清武と受け継がれたクラブ伝統の重み。今後、後継者となるべく柿谷は「自分には重くてつけられない」と言ったが、清武は「オレはそれほど思わない」と強がった。だが内心は違う。「８番で結果を残せなかった」。大阪に残した悔しさを糧に、香川以上の輝きを求め海を渡る。