恩師が語る!燃えているのが本当の遠藤
2014年5月21日
遠藤にスイッチが入ったのが高校3年の冬だった。年代別代表にも選ばれていたが、なぜ最後の選手権でベンチを温めたのか?話は約1カ月さかのぼる。鹿児島実は97年、県代表として天皇杯に初出場した。11月30日に行われた1回戦の相手は翌年からJリーグに参入するJFLの札幌。“プロ”に高校生が挑むと話題になった。
この試合の遠藤は目の色が違った。ウーゴ・マラドーナ、バルデスといった外国人選手に、果敢にチェックを試みた。「スライディングなんてしたことがないのに」と松澤さんが驚いていると、アクシデントが起きた。前半23分、プレー中に右足首のくるぶし周辺を骨折、交代を余儀なくされた。「別人のようだった」という全力プレーが招いた悲劇だった。
遠藤について、松澤さんの目には「この程度やっておけばいいだろう、というのがあった」と映っていただけに、珍しい出来事だった。98年にプロ入りしてからも、ガツガツした野心はほとんど感じなかった。G大阪に移籍した22歳ごろには「ヨーロッパに行ったらどうなんだ?」と水を向けたが、あまり乗り気ではなかった。いくつかオファーを受けていたことを明かしながらも、「国内でも成長できる」という考えからG大阪に残った。
昨季までのプロ生活16年の中で、松澤さんは2回、本気になっているのを見たという。1度目は、アジア代表として出場した08年クラブワールドカップ準決勝、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)戦だった。
C・ロナウド(ポルトガル)ルーニー(イングランド)といったスター集団を相手に全力でピッチを駆けた。「端のコーナーから、反対側のコーナーまで全力で走っていた」と目を丸くした。3‐5で敗れたが、遠藤はPKで1得点。札幌の選手に飛びかかっていった10年前の姿と変わらなかった。
もう1試合が10年W杯南アフリカ大会、1次リーグ・デンマーク戦だった。1‐0で迎えた前半30分、約20メートルの直接FKを入れ、投げキッスをしながら拳を突き上げ、仲間が待つベンチへと駆け込んだ。心の底から喜びを爆発させる教え子の姿に「ああいうこともするんだな」と驚かされた。
遠藤の沸点は人並み外れて高い。だが、格上相手や大舞台になると、別人のようなプレースタイルでチームを鼓舞する。クールな遠藤と、熱い遠藤。どちらが本当の姿なのか?両面を見てきた松澤さんは少し考えた後、「燃えているのが本当の遠藤なんだろうね」と言って笑った。
出場ゼロで失意に暮れた06年ドイツ大会。日本を2度目の16強に導いた南ア大会。「優勝を目指します」と宣言した3度目のW杯で、遠藤はどんな姿を見せるのだろうか。
ブラジルW杯コラムニュース
- ドイツ米大陸で優勝…歴史的な大会に(7月14日)
- ドイツ優勝…決勝で勝敗を分けたもの(7月14日)
- オランダに受け継がれる哲学(7月13日)
- 「裸のサッカー王国」大敗に「0」採点(7月11日)
- 奇策があだに…オランダPK戦に散る(7月10日)
- 閉じられた試合…アルゼンチン決勝進出(7月10日)
- 7月8日…ついに崩壊したブラジル神話(7月9日)
- 合理性貫き勝利…ドイツ7得点(7月9日)
- オランダとアルゼンチン鍵握るドリブル(7月8日)
- ブラジルに救世主は現れるのか(7月7日)
- 点取り屋の存在感…イグアインの反応(7月6日)
- 息詰まる真剣勝負…オランダ4強入り(7月6日)
- 「フランスはカモ」遠かった勝利(7月5日)
- ネイマール離脱…不安な王国攻撃陣(7月5日)
- 激闘続きの理由のひとつは好GKの存在(7月4日)
- ベルギー8強…エースの復活に期待(7月4日)
- 散歩する王者…老人のようなメッシ(7月2日)
- 「レ・ブルー」何かを起こす予感(7月1日)
- ドイツ体格的な優位性発揮できず苦戦(7月1日)
- すばらしき敗者…メキシコ代表(6月30日)
- 瞬時に完璧な判断!天才ロドリゲス(6月29日)
- 大会救ったセーブ…ジュリオセザール(6月29日)
- アジア勢惨敗…出場枠見直しも(6月28日)
- 余裕の引き分け…フランス1位通過(6月26日)
- 「サッカーの母国」前途は多難(6月25日)
- 抱いていた夢は妄想…これが日本の実力(6月25日)
- 首位を取る戦い…オランダに一日の長(6月24日)
- 考えない大切さ精魂つきるまで戦い抜く(6月24日)
- 若手が躍動「赤い悪魔」ベルギー2連勝(6月23日)
- アルジェリア快勝で悲願に前進(6月23日)
- 満足な引き分け…ドイツ-ガーナ(6月22日)
- 最後は個の力…メッシのロスタイム弾(6月22日)
- 小国が見せた驚き コスタリカの躍進(6月22日)
- なさすぎた勇気…ボール遊びだった日本(6月20日)
- スアレス2発!頼れるエース復活(6月20日)